海猿 ★★★☆

海猿
2004 スコープサイズ 119分 @DVD 
原作■佐藤秀峰小森陽一 脚本■福田 靖
撮影■佐光朗 照明■水野研一
美術■相馬直樹 音楽■佐藤直紀
VFXスーパーバイザー■石井教雄
監督■羽住英一郎


 海上保安官の仙崎(伊藤英明)は潜水士を目指して大学校での訓練を開始するが、バディの工藤(伊藤淳史)が不慮の死を遂げ、海上訓練で挫折しかけるが・・・

 「LIMIT OF LOVE 海猿」に比べるとリアルな物語世界で、潜水訓練を舞台として、主人公が仲間たちと支えあって、男として職業人として成長してゆく姿を熱く描き出した羽住英一郎の映画監督デビュー作。演出には全く危なげが無く、ベテラン監督の貫禄さえ漂う、実にいい映画である。

 「愛と青春の旅立ち」などのアメリカ映画のエッセンスを援用しながら、海上保安庁の潜水士というマニアックな設定の中に人間にとっての労働の意味を問いかけ、対比として加藤あいの東京での職業を配置して、そのテーマを補強するという、オーソドックスによくできた脚本だ。「LIMIT OF LOVE 海猿」と同じ福田靖の脚本だが、第2作のバカ映画ぶりとの差異に驚かされる。

 伊藤英明は日本のベン・アフレックといった風情だが、教官役の藤竜也の渋さは完璧で、名演と呼んでいいだろう。伊藤淳史の中盤での事故死の扱いも、実にいい具合に抑制が効いており、監督のバランス感覚の正しさを確認することができる。

 先輩監督にあたる本広克行の演出のあざとさに比べると、羽住英一郎が謳う内容には実質がこもっている点が、両監督の大きな差となっているだろう。

 この映画と見比べると、「LIMIT OF LOVE 海猿」は「逆境ナイン」の直系であることがすんなりと納得できるだろう。

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