![DAGON [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/51O6QIrpipL._SL500_.jpg "DAGON [DVD]")
基本情報
ＤＡＧＯＮ
（ＤＡＧＯＮ）
２００１／ＳＴ
（２００５／１／１０ レンタルＤＶＤ）
感想（旧HPより転載）
一攫千金の夢を叶えてスペイン沖をクルーザーで航行中の主人公は嵐に遭遇し、スペインの鄙びた漁村に救助を求めるが、フィアンセが失踪し、降りしきる雨の中、不気味な村人たちに追い回される。村で唯一の人間だと語る老人は、その昔キリスト教を捨て邪神ダゴンの信仰に転向した村の歴史を明かす。村の長の家に潜入した彼を迎えたのは、悪夢の中で出遭ったエキゾチックな美少女だった。だがその下半身は人間のものではなかった・・・
Ｈ・Ｐ・ラブクラフトの原作を、デニス・パオリが脚本化し、スチュアート・ゴードンがスペインで撮影した真性ホラー映画。いつもながらはずれの無いレベルの高い脚本で、低予算ながら久々の映画演出に持ち味を十分に発揮したスチュアート・ゴードンの怪奇趣味が横溢した快作である。
なんと言っても物語の舞台となる港町の陰鬱な情景のロケーションが抜群に素晴らしく、ヨーロッパならではの地の利を生かした設定が成功の要因だろう。鬱々と降り募る雨のなかで異形の村人のシルエットが蠢き、湿った闇が街を支配する、この世と異界の狭間に位置する漁村の姿は、小中千昭の「インスマスを覆う影」では実現不可能だった造形美を醸し出している。
異形の女王を演じるマカレナ・ゴメスは両眼を見開いた表情がバーバラ・スチールにそっくりな美形で、監督の６０年代ホラーに対する強烈な執着を感じさせる。クライマックスの生贄の儀式のデザインなどにもそのことは顕著で、ラストがラブクラフトの小説の引用で終わるのもロジャー・コーマンそのものという嬉しい趣向である。
唯一惜しいのがＶＦＸ予算の貧弱さで、特にラストの海中シーンは一点豪華主義で大きな画を用意するべきだったろう。それにしても、スチュアート・ゴードンにはもう少し陽が当たってもいいはずだと思うのだが。なぜかこのＤＶＤもスタンダードトリミング版なのはあまりに悲しい。傑作「フロム・ビヨンド」もＤＶＤ化されず、いつまでこの不遇が続くのだろうか。
