基本情報
ドールズ
(DOLLS)
1988/スタンダードトリミング版
(2002/1/5 レンタルV)
感想(旧HPより転載)
旅行中の一家とヒッチハイカーたちが嵐を避けて逃げ込んだ屋敷には人形作りの老夫婦が住んでいた。屋敷の財産を狙う若い女を手始めに疑心暗鬼にかられた大人たちが、次々と夜陰に徘徊する人形たちの餌食となってゆく。老夫婦の作り出した生き人形たちは童心を忘れた大人たちを許さないのだった。
エンパイアピクチャーがローマに所有する自社スタジオで制作した低予算ホラーだが、一応スチュアート・ゴードンの監督作品なので、古典的に引き締まった小品に仕上がっている。まあ、人形ホラーとしては「チャイルド・プレイ」の中盤までが傑作だったので、サスペンスとしての構成はそれに劣るのだが、古典的怪奇映画を指向するお膳立ての律儀さがスチュアート・ゴードンの顕著な特徴といえるだろう。
動き回る人形たちの表現には間借りなりにも人形アニメが使用されており、主人公の少女の父親が人形に変貌してゆくクライマックスも、今日ならCGとデジタル合成でお手軽に出来上がってしまうシーンを特殊メイクと人形アニメの合成によるモンタージュで構成しており、その想像を絶する有り様の異様さとグロテスクさの要点だけを提示する。
スチュアート・ゴードンの他のホラー作品「フロム・ビヨンド」「キャスッル・フリーク」等と比べるとグロテスクなファンタジーを意図した特異な作品で、「童心を忘れない」といえば聞こえが良いが、実のところ大人になりきれないオタクな登場人物が、人形たちと心を通わす少女のおかげで辛うじて命拾いして逃げるように屋敷を後にするというエピソードに、皮肉の棘を潜めて、さすがに一筋縄ではいかない作家魂を見せつける。
はたしてラブクラフト原作、ブライアン・ユズナ脚本の最新作「ダゴン」は日本公開される日が来るのか?スチュアート・ゴードンにはもう少しメジャーな舞台で活躍して欲しいのだが・・・