『ギャザリング』

基本情報

ギャザリング
(THE GATHERING)
2004/CS
(2004/10/2 レンタルDVD)

感想(旧HPより転載)

 イギリスの片田舎で地中に埋まった教会が発見されるが、地元の司教は秘密裏に修復することを命じる。同じ頃、記憶をなくした米国娘(クリスチーナ・リッチ)が保護され、教会の修復を依頼された学者の家に下宿することになる。だが、娘は次第にある視線の存在に気づいてゆき、村で知り合った人々が無残な死を迎える幻視に悩まされはじめる。その原因を探るうち、一人の男の存在に行き当たるが、そのころ司教たちは地中の教会に秘められた邪悪な秘密についての証拠を突き止めつつあった・・・

 全くなんの予備知識も無い状態で見ると、軽いめまいを覚える寓話的ホラーの傑作。アンソニーホロビッツの傑作脚本を監督のブライアン・ギルバートがイギリス映画らしい地味なタッチで着実に描き上げる。

 田園地帯の地下から発掘された教会の忌まわしい秘密とは何か、そして村に集いヒロインに胡乱な視線を送る一群の人々は何者か、実に二千年にわたる気宇壮大なキリスト教の呪いを、限定された時空間の中に次第に解き明かしてゆく、着想の凄さと手際の巧みさに陶然とすること請け合いの傑作なのだが、何故全国で大公開されなかったのか理解に苦しむ。今の社会情勢のなかでこそ広く見られるべき異議ある一作なのだが。ある意味で「華氏911」を超える訴求力を秘めた恐るべき映画なのだ。

 記憶をなくしたアメリカ娘を演じるクリスチーナ・リッチのどこか浮世離れした風情がよく生かされて、周囲を固めるイギリス人俳優の地味ながら堅実な演技が、まさに大法螺と呼ぶに相応しい物語を地に足のついたものにしている。

 シャマランの映画を愛する人は必見として、全映画ファン必見というべき問題作である。

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