『デイ・アフター・トゥモロー』

デイ・アフター・トゥモロー
(THE DAY AFTER TOMORROW)
2004/CS
(2004/6/2 伊丹TOHOPLEX・SC1)

感想(旧HPより転載)

 地球環境の急激な温暖化により、北極の氷が溶け出し、海水温度と塩分濃度が低下したことで、北半球を異常気象が襲う。事態は学会で警告を発した科学者(デニス・クエイド)の予想を上回るスピードで進展し、仲間たちとNYへ出かかけた息子(J・ギレンホール)らは大津波からは生き残ったものの、極超低温の嵐の中に孤立してしまう。大統領が北部の放棄を決定し、米国民が国境を越えてメキシコへ非難するなか、父親は息子を救出するため、NYへ向かう。

 「ID4」「GODZILLA」で散々不評を買ったローランド・エメリッヒのVFX超大作で、2時間15分の間観客が余所見をしないようにスペクタクルとサスペンスを自在に操って、いかにもこれぞ夏映画の決定版!といった娯楽作に仕上がっている。実際、印象としてはこれまでの諸作に比べれば、若干知能指数が向上したように見えるが、「ディープ・インパクト」のドラマ的な高揚感には及ばない。

 VFXの見所は前半の竜巻に襲撃されるLAの場面の臨場感に尽きるのではないだろうか。ILMとしては「ツイスター」で経験済みのエフェクトだが、大都会に同時多発的に竜巻が発生する世紀末的な光景はやはり圧巻だ。これに比べると、後半の氷河に閉ざされたNYの光景は絵葉書のように見えてしまう。

 NYを襲う津波(高波?)の、ミニチュアを使用せずすべてCGでシミュレートした水の表現は確かに凄まじいが、どうもアニメ的に見えてしまう。しかし「ディープ・インパクト」よりは確実に進歩している。

 そうしたVFXの見せ場も確かに頼もしいのだが、今回は主人公の科学者一家のエピソードに焦点を絞込み、カットバックでサスペンスを高めていった脚本構成がオーソドックスに成功しており、実に上品な人間ドラマの描写が、東宝の「世界大戦争」や「妖星ゴラス」を髣髴させる。世紀末的な切迫感という意味では「日本沈没」や「ノストラダムスの大予言」に近いはずだが、ここでは70年代のえげつなさは模倣されていない。

 実際父子の再会シーンなどはもう一工夫必要なはずだし、米国難民を巡るシビアな政治的駆け引きなども点描してほしいところだが、ローランド・エメリッヒは予想以上に健闘している。J・ギレンホールとエミー・ロッサムの美男美女コンビの素直なさわやかさも映画の品を高めている。

 と、文句も言ってみたものの、この夏休みに映画館でもう一度観てみたい一作。案外お気に入りなのだ。

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