感想(旧HPより転載)
吝嗇家の父(中村鴈治郎)に育てられた長男(川崎敬三)は計算高さを活用して、幕府から財政赤字の穴埋めに江戸十人衆に命じられていた献上金の支払いを回避するための贈賄工作を買って出て、あやつり組を組織する。だが、その弟(中村豊)は兄の立ち回り先に後から押し込んで強請りたかりで利益を得始める。ついにあやつり組の首魁暗殺を命じられた弟は兄と対峙することに・・・
基本的にはブラックコメディなのだが、池広一夫の脳裏には当時大映のホープであった増村保造の”社会派”映画のイメージがあったのではないだろうか。ここでの川崎敬三は増村の後の田宮二郎の雰囲気を先取りしていように見える。池広一夫の映画に外れなしで、今観ても十分に面白く、家康公との二役を演じる中村鴈治郎の悪ノリぶりも圧巻。本業の歌舞伎では人間国宝なんですけどね、この人。
まだまだ大映映画に余裕のあった時代で、セットも広いし、エキストラの規模も大掛かり、ラストの主人公たちが江戸の町を見下ろすカットは、ホリゾントの細密画の前に人形を置いて撮影したミニチュア撮影ではないだろうか。
今もテレビドラマでは現役として活躍中の池広一夫は、大映時代に切れのよい娯楽時代映画を多数発表しているのだが、特集上映も無く、実は不遇な監督である。