『陸軍中野学校 密命』

基本情報

陸軍中野学校 密命 ★★★
1967/スコープサイズ
(2001/6/14 BS2録画)
脚本/舟橋和郎
撮影/今井ひろし 照明/加藤博也
美術/西岡善信 音楽/斎藤一郎
監督/井上 昭

感想(旧HPより転載)

 上海で突如憲兵に検束され東京で拷問を受ける椎名(市川雷蔵)は同じ房の老政治家(山形勲)と打ち解けるが、それは草薙中佐(加藤大介)が秘密裏に日本に潜入した英国諜報機関の幹部キャッツ・アイの正体を探るため、椎名を代表的な親英派の大物に接近させるための策略だった。老人の交友関係からスパイを割り出そうとするが却って疑われて屋敷への出入りを禁じられてしまう。最も隙の多い未亡人(野際陽子)を籠絡してキャッツ・アイの正体を探らせるが、正体を掴んだ矢先に暗殺されてしまう。さらに老人までもが右翼によって暗殺されてしまい、探索は万事休すと思われたが、もうひとつの手掛かりから遂に核心に触れる人物の存在を発見する。

 犯人探しの興味で構成されたシリーズ第4弾。今回は戦争回避を主張する大物政治家と主人公の交流が中心になるものと思いきや、山形勲は中盤であっさり暗殺されてしまうのだからもったいない。

 キャッツ・アイの正体はかなり無理矢理に捻ったものだが、その荒唐無稽さがプログラム・ピクチャーの楽しみというものだろう。正体を掴んだ椎名の同期生があまりの意外さにすぐさま報告するのを躊躇したために殺されてしまったという前振りももっともと頷けるほどの真相なので、ここでも明かさないことにしておこう。

 物語の舞台はほとんどが東京だが、老政治家の邸宅などかなり予算規模的には膨らんだようで、今井ひろしの安定感溢れる構図、井上昭の演出意図によると思われるコントラストの強いモノクロ撮影の輝く陰影が予想以上に贅沢感を煽っている。

 前作で戦死した杉浦に代わって中野学校の後輩とコンビを組むのだが、山下洵一郎はどうも胡散臭くていけないぞ。 

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