感想(旧HPより転載)
化粧品の新製品に関する企業秘密を巡ってライバル会社が争うというまるで「キングコング対ゴジラ」そっくりの枠組みの中で、当時の渡辺プロの人気者と東宝若手俳優が歌って踊る、ほとんど無責任シリーズと完璧に同じ演出の古澤憲吾が独壇場の異常ミュージカル世界を炸裂させる。
なにしろ、もうキャストを並べるだけでほとんど内容の見当がついてしまう。化粧品会社の社長が淡路恵子、その会社の重役が平田昭彦(!)と松村達雄、人事課長が有島一郎、宣伝部長がハナ肇で宣伝課長が植木等(!)、宣伝部員の3人娘が団令子、浜美枝、中真知子、ライバル会社の社員が佐原健二、若林映子で、その他坂本九、青島幸男、人見明、谷啓、ジェリー・藤尾という凄まじさ。で、佐原健二はここでも浜美枝とカップルになる。
当然ながら植木等も無責任男そのままに歌って踊り、フランスから有名化学者が帰国すると聴いた途端、3人娘もフランス帰りに対する妄想を膨らませ「フランス帰りは素晴らしい~」と気の狂ったようなダンスを披露する。といっても、この部分は一応プロのダンサーが担当するからまだマシで、ライバル会社が色分けされた衣装を身にまとって入り乱れて踊りまくるミュージカルシーンなど、クレイジーキャッツの面々の息切れが聞こえてきそうないつもながらの乱暴な演出。デパートのシーンではマイクもバレてました。
自社ビルの屋上で植木等が「宣伝部の歌を歌うぞ!」と声をかけて踊り出す伴奏がなぜか軍艦マーチだったりして、おそらく曲が間に合わなかったのではないだろうかという適当さ。
脚本も見せ場主義で場当たり的に展開するバラエティ調の構成で、相当でたらめ。ただ、植木等と坂本九がそれぞれの持ち歌「ニッポン無責任時代」「上を向いて歩こう」を交換して歌うシーンがあるのだが、これも唐突に挿入される。
結局、産業スパイはどう見ても場違いな平田昭彦なのだが、正体がばれるや懐から突然サングラスを取りだして遁走するラストがおかしい。平田昭彦、ほんとにいい俳優だったよ。
異常天才監督・古澤憲吾に何を言っても空しい。できることといったら、ただ礼賛することだけなのだ。
(98/9/29 シネマスコープ フィルムセンター)
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