感想
■『刑事のまなざし』がTBSでドラマ化された薬丸岳の有名小説のドラマ化。 本作で第37回吉川文学新人賞を受賞したそうです。原作小説は未読。制作協力は『刑事のまなざし』も制作したドリマックス。昔の木下プロですよ。
■離婚した妻が養育している中学生の息子が同級生殺害の容疑で逮捕される。完全沈黙を貫く息子は何故人を殺めたのか、世間のバッシングに消耗し、家裁からの逆送に怯えながら、父親は息子の心に正面から向き合うことができるのか…
■なにしろ原作小説があるので、脚本の山本むつみもあまり自由が利かなかったと思われる。あの『八重の桜』を書いた剛腕の持ち主だが、自由度は低かっただろう。山本むつみのオリジナル作品も観たいものだが。
■やっと口を開いた14歳の少年が発する「心を殺すのと肉体を殺すのはどちらが罪が重いのか」という命題に対して、父親が答えを探す心の旅路が本作のテーマとなっている。じつに薬丸岳らしい、少年の心に寄り添って、そこに焦点を絞ってドラマを紡いでいく動機に関する犯罪物語で、一定の見ごたえがある。ほんとに少年に対する作者のまなざしに感動する物語であり、ドラマである。
■ただ、終盤にやっと登場する殺された少年の父親が仲村トオルというのは、これはさすがに荷が重かったようだ。仲村トオルには何の恨みも遺恨もないけれど、これは配役ミスといえるだろう。あるいは演出ミス。仲村トオル君はデビュー作からずっと見てるから敢えて言うけど、何でも演じられる人ではないからね。役柄によってハマらない場合がある。この役は、もっと老けて見える役者が必要だった。
■逆にビシッと決まるのが家庭裁判所の調査官を演じる安田顕で、短い出番ながら完全に役得。こどもの立場から両親の出来の悪さ、甘さや至らなさをビシビシと指摘してゆく様が小気味いい。母親役の戸田菜穂も配役が成功していて、精神的に不安定で、すぐにとり乱し、息子の危機を支えてやれない、不甲斐ない母親をリアルな姿で見せる。まるで役作りをしていないようリアリティがあり、感心した。役に立つようで立っていないような、でも存在感がある弁護士が天海祐希で、これも実在感があるし、職業的な限界もリアルに描かれる。
■ただ、終盤の演出プランに無理があり、演出的な限界を感じた。愁嘆場をこれでもかと重ねる構成は疑問に感じた。このあたりは原作小説の方が説得力を持っているだろうと想像するがいかがなものか。

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参考
▼山本むつみといえば『八重の桜』。よくも書いたり。今や伝説。
maricozy.hatenablog.jp