偏差値の高い映画だけど、テーマに普遍性が感じられない鬱映画『愚行録』

基本情報

愚行録 ★★★
2017 スコープサイズ 120分 @アマプラ
原作:貫井徳郎 脚本:向井康介 撮影:ピオトル・ニエミイスキ 照明:宗賢次郎 美術:尾関龍生 音楽:大間々昂 編集&監督:石川慶

感想

■一家惨殺事件を追う雑誌記者(妻夫木聡)には、児童虐待で勾留中の妹(満島ひかり)があった。関係者の証言を追ううち、殺された夫婦の大学時代の交友関係に問題がありそうだが。。。

■石川慶の長編デビュー作で、バンダイビジュアルにオフィス北野まで製作陣に参加したうえにワーナー配給というメジャー作。にしてはお話の内容とかテーマに普遍性がなくて、最終的になんの希望もなく終わるので、よく実現したなあと感心する映画。石川慶なので基本的に映画的な偏差値は高くて、全編にサスペンスは効いているし、ホラー描写も悪くない。映画としてのクオリティは明らかに高い。だけど???ということだね。

■結局は、一家皆殺し事件の動機があるのは誰なのか?というお話で、次々と証言者が登場して、夫(小出恵介)と妻(松本若菜)の過去、といっても若いので大学時代にどんな交友関係があって、当時どんなことを考えていたのかがお話の核心になる。けど、正直、このあたりが腑に落ちないので、動機としては弱いし、事件の残忍性とバランスが取れていないと感じる。それぞれにクソ野郎なのはわかるけど、それで映画として面白いのか?ということだ。

■そもそも動機の部分とか大学生活の描写が、50年代、60年代の日活映画ですか?というくらいの人間関係で、日本は格差社会ではなくて階層社会なのだと言及するけど、映画の中で描かれる事象は、それそんなに切実な問題ですか?という感じで、全く腑に落ちない。原作小説はもっと説得力があるのかもしれないけど。

■なにしろ脚本は向井庸介だし、石川慶の腕も確かなので退屈はしないし、エピソードの刻み方には映画的なスリルも満載で、悪くないけど。。。満島ひかりの役どころが坂元裕二の『それでも、生きてゆく』と微妙に被ってしまうのも、狙ったのかなあ?成功している?

松本若菜は電王の人だし、臼田あさ美は最近坂元裕二のドラマで知ったところだけど、なんでそんなに重用されるのか疑問だし、他の若手女優人がみんな地味で大作のわりには冴えない。弁護士役の濱田マリの配役は大成功だったけど。


参考

maricozy.hatenablog.jp

貫井徳郎という人は、かなりひねくれた人らしく、着眼点が普通じゃないのは知ってます。『乱反射』も相当な異色作でした。
maricozy.hatenablog.jp
落合正幸が撮ると完全にホラーになりました。傑作。
maricozy.hatenablog.jp

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