結局何が言いたいのか?『日本国男村』

石川テレビが制作した番組で、2022年民間放送連盟賞最優秀を受賞したドキュメンタリーだけど、ちょっと作為がすぎる気がする。ディレクターは『はりぼて』の五百旗頭幸男で、俊才だけど、このひと構成と編集がうますぎるのだ。(編集は西田豊和)

■長期政権が続いた石川県知事が谷本正憲から馳浩に交代するタイミングと、地元のムスリム教会に集う国際結婚のイスラム家族の姿を対比しながら、結局テーマが有機的に結びつかないまま、え、それで終わり?というドキュメンタリー。「男村」としての県政の姿を云々するには描写が弱くて、事実に基づいたツッコミが足りない。自分の目にした些細な違和感を積み上げたに過ぎず、普遍性に至っていない。象徴的に知事の水差しを丁寧に拭き上げる女性職員の姿を繰り返すあたりの構成は映画テクニック的にうますぎるのだが、ドキュメンタリーとしては弱いよね。編集はホントに憎いほど旨いと思うけど。

■その意味で『はりぼて』のわかりやすい主張と比べると明らかに弱いのだが、県庁職員に対する関心の寄せどころは悪くないと思う。でも、そうなら、県庁職員に直接アタックすればいいのに。なんで、そこに突撃しないのか?

NHKの特番でもゲストがディレクター本人を前によくわからないと発言するくらいに統一感がない作品なのだ。残念。


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