登場人物の苦衷が手に取るようにわかるので観ていて辛いドキュメンタリー『はりぼて』

基本情報

はりぼて ★★★
2020 ヴィスタサイズ100分 @アマプラ
音楽:田渕夏海 語り:山根基世 監督:五百旗頭幸男、砂沢智史

感想

■2016年以降発覚した富山市議会自民党議連の政務活動費不正経理事件とその後の辞職ドミノの経緯を地元チューリップテレビの報道素材を元に映画化したドキュメンタリー。

不正経理の手口が原始的すぎて空いた口が塞がらないけど、昭和の時代はどの地方でもこれで通っていたのだろう。白紙の領収書を馴染みの業者からもらっておいて、自由に金額を記入して、政務活動

費を使いきる。昭和の時代では普通にあったことだろう。他の地方ではさすがにそれは通用しないから是正が進んでいたようだが、富山県ではなぜかその古い悪弊が生き残っていたらしい。内部で誰も指摘しなかったのだろう。だめな組織の典型ではある。

■洒落にもなんにもならない議員の辞職ドミノはやむを得ないとはいえ、唖然とするし、議員や議会事務局や役人たちの虚を突かれて間抜けな対応をしている様子が、モザイク無しでそのまま映し出されるし、映画になってしまったので、未来永劫そのまま残ることに。関係者は孫子の代までこの事件に関してあれこれ言われ続けることになったわけで、そこはさすがに過酷すぎると感じるところ。もちろん、その時には然るべき罪を償っているわけだけど、映画の中では悪人として指弾され続けるわけ。ドキュメンタリー映画ってそんなものといえばそうかもしれないが、そこの倫理的な問題は公式にはどんな見解になっているのだろう?

■基本的に偉い人の揚げ足をとるには経理伝票を精査すれば良いというのが定石ではあって、もちろん偉い人はいちいち伝票の内容なんて見ていないので、実際は事務担当者が手掛けているはず。それにしても、事務担当者はこんなことやっていると一発でバレるし、辻褄が合わないし、言い訳できないよねと認識しているはずなので、上から命じられるまま、あるいは前例踏襲で実行しているはずなのだけどね。それは権力者を追い詰めるひとつの便宜的な手法ではあるけど、ほんとにそれでいいのか?とも感じる。税金で飲み食いするなという話にしても、言う方も、やる方もレベルが低すぎて、ちょっと議論のレベル感が違うと感じるところだ。不適切な経理処理など、あくまで便宜的な形式的な問題なので、そこじゃなくて、本丸で追い詰めてもらいたいものだ。

■一方で、自民党市議連を追い詰めた記者たちにチューリップテレビ内でも喧嘩両成敗的な人事が行われ、幕引きを図ろうとする力学が働く。ああ、怖い怖い。まあ、それも含めてテレビ局じたいが映画で明るみにしているから凄いけどね。でもなんというか、観ていてひたすら辛いですね。身につまされるという感じで、全く笑えない。深刻になりすぎないように音楽自体は軽快な音楽を敢えてつけているけど、笑えない、笑えない。笑うに笑えない。


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