神阪四郎の犯罪 ★★★

神阪四郎の犯罪
1956 スタンダードサイズ 111分
DVD 
原作■石川達三 脚本■高岩 肇
撮影■姫田真左久 照明■岩木保夫
美術■木村威夫 音楽■伊福部昭 
監督■久松静児


 文学少女左幸子)と心中して生き残った雑誌編集長(森繁久弥)の裁判で、女事務員、評論家(滝沢修)、妻(新珠三千代)らが証言するが、その内容はそれぞれに自分に都合のいいように歪んだもので、結局真実はどこにあったのかと問いかける法廷劇。

 法廷劇といいながら、リアルな法廷の姿を目指したものではなく、それぞれの証言によって事件の背景が微妙に違う形で浮かび上がる作劇に力点を置いている。「羅生門」の二番煎じともいえる着想だが、複雑な設定の役柄を熱演する左幸子の演技や伊福部昭の荘厳な劇伴のおかげで重厚な作品となっている。

 結局は主人公とその一家をいいように操っていたらしい曲者の評論家を演じる滝沢修は貫禄とアクの強さで圧倒的な印象を残すが、森繁久弥の配役は異色を狙いすぎた感がある。

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