基本情報
Battle of Jangsari ★★★☆
2019 スコープサイズ 104分 @アマプラ
感想
■1950年、朝鮮戦争起死回生の極秘作戦、仁川上陸作戦のために陽動作戦として長沙里上陸を命じられたのは、700名を超える訓練未了の学徒兵たちだった。多大な犠牲を出しながら高地を制圧するが支援が途切れ、人民軍が迫る中孤立してしまう。。。
■米軍(国連軍)は既に数百名の死者を出して、これ以上の犠牲は出せないから、韓国軍でなんとかしろと言うし、韓国軍の責任者も無責任に遊撃隊の投入を決定する。遊撃隊の組成を提案して学徒兵の訓練に当たっていたイ大尉は、今はまだ無理ということは上官に言っても無駄なので、実戦経験は浅いけど自ら陣頭指揮を申し出る。
■映画は民間から挑発した輸送船で台風で大荒れのなか、長沙里に船体を座礁させて兵たちを送り出す場面から、一気に観客を最前線に投げ込む。民間の船員たちすら、本当にあの学生たちを戦場に送り込むのか?と半信半疑。船倉には数百人の学徒兵たちがひしめき、まさに地獄の様相をストレートに描き出す。映画のテーマを一瞬で理解させる優れた話術だ。ボートで兵たちを送り出すけど、敵陣から狙い撃ちで死屍累々なので、見るに見かねた民間人が海のことなら任せとけと、学徒兵を誘導するあたりも泣かせるし、絶望感を煽る。しかも民間の船員たちは最終的に全滅するのだ。
■かように絶望的で無謀な捨て石作戦を米軍の女性従軍記者(なんとミーガン・フォックスが演じる)の取材をクロスさせながら描くけど、徐々に戦場での友情物語にシフトしていくのがさすがに『友へ チング』の監督クァク・キョンテク。(あれ?『友へ チング』観てないかも)最終的には北から亡命して軍に志願した青年と、口減らしで親戚にやられて、戦功を立てれば母親に認められるかなあ、アメリカに留学できるかなあと夢を語る青年の友情物語に収束する。後半はかなりベタベタしてくるけど、お話の筋は通っているから悪くないし、青春映画として泣かせる。
■ワーナー・ブラザーズのローカルプロダクション製作で、日本でも同様の映画は製作されるものの、何故か予算規模が大幅に異なる。なにしろ韓国の場合は、ミーガン・フォックスが出ちゃうのだ。もっとも、その演技的な、演出的な完成度はやはりハリウッド映画には及ばず、微妙に遠慮がちに見えるのだけど。当時、実際に女性の従軍記者がいたらしく、イ大尉は多くの犠牲者を出したことから裁判で死刑が求刑された(ひどい)が、その後復権されたという。自国の歴史的恥部をグイグイえぐり出して、真正面から娯楽映画に仕立て全世界に売る、韓国映画のど根性は、今の日本映画には期待できないところだ。(まあ政治的背景が絡んでいるけど)じっさい『沈黙の艦隊』なんて作ってる場合じゃないよね。ガダルカナル撤収作戦を映画化すればいいのに!(昔は『太平洋奇跡の作戦 キスカ』なんて傑作もありました。まあガダルカナルは地獄すぎるかも)
参考
オキナワは本土決戦の捨石だ!
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp