4Kリマスター版で観る『地球防衛軍』(@「午前十時の映画祭13」)

基本情報

地球防衛軍 ★★★
1957 スコープサイズ 88分 @高槻アレックスシネマ

感想

■「午前十時の映画祭13」で4K版「地球防衛軍」がついに公開されました。京都の場合は、Bグループに属し、京都シネマでかかるのでスクリーンが小さく、どうも東宝特撮を観る環境ではないので、高槻アレックスシネマで鑑賞しました。プレミアスクリーンで観やすくて上々でしたが、料金が1500円(!)になっていて驚きました。昔は1000円で観られたのになあ。。。浦島太郎の気分です。

■画質はさすがにニュープリントよりも綺麗で、なにしろナイトシーンが東宝らしく見やすい明るめの設計になっているのが美点。ナイトシーンはいわゆる疑似夜景で撮られているようだけど、その潰し具合の絶妙さも確認しやすい。明るすぎず、暗すぎずの塩梅ですね。発色で特に秀逸なのは、ジェット戦闘機の場面で、自衛隊機を撮影した実写とミニチュアショットの青空の質感が変わらないこと。これは驚いた。それに、空中で炸裂する弾着の閃光の鮮やかさにも感動した。炸裂する閃光と、立地な黒煙のコントラストの階調の広さ、生々しさは、さすがに4Kの威力だろう。ミステリアンのドーム基地に炸裂する弾着の火薬の火花も綺麗に再現され、質感が上がっている。このあたりの火薬効果は正直昨今のミニチュア特撮よりも秀逸で、なんであの綺麗に四散する火花が再現できないのか不思議に感じる。(ハリウッド映画では定番だけど)

■モゲラの出現に対して最初は消防車の放水で対抗するしかないけど、次には防衛軍の通常兵器が出動、さらにα号、β号、最終的にマーカライトファープとα号(電子砲搭載)、第二β号の投入と、段階を踏んでエスカレートする一大攻防戦は燃えるし、突如出現して進撃するモゲラに対して、「この鉄橋が防衛線です!早く渡ってください!」とか突然言われる地元避難民の心細さは想像するに余りある。そのあたりも本多演出はドキュメンタルに淡々と描く。欲を言えば、狼狽する避難民の点描が欲しかったところ。静かな戦場だ、本当に戦闘は始まっているんだろうかと呑気に言ってると、あっという間に猛爆撃の轟音と爆風に包まれる避難壕の場面などもリアルで秀逸な演出。このあたりの重厚さは東宝ならでは。

■ただ、今回改めて観ると、ドラマの薄さがどうしても気になりますね。ホントに骨組みしかないのね。平田昭彦の印象が薄いのも、登場場面が少ないし、彼の変心(改心?)のプロセスが随分簡単なせいだ。特に女性の描き方はかなり杜撰というか、完全にお飾りというか道具立てにしか見えない。でもそうした見方はミステリアンの女性観にも通底していて、彼等は種の保存、繁殖のため(だけ)に人間の女性を求め、拉致する。最近、この時代の日本映画をいろいろと観ていると、今観ても古く感じないくらいにリアルな女性像が描かれているので、これはさすがに拙いなあと感じてしまった次第。なんといっても子ども映画だし仕方ないんだけど、東宝特撮映画も後年、ちゃんとリアルな自我のある女性像を描きはじめるので、木村武(馬渕薫)もまだまだ言われたことを忠実にこなす段階だったのだろうね。

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参考


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