宇宙大戦争 ★★★☆

宇宙大戦争
1959 スコープサイズ91分
LD
原作■丘美丈二郎 脚本■関沢新一
撮影■小泉一 照明■石川緑郎
美術■安倍輝明 音楽■伊福部昭 
特技監督円谷英二 監督■本多猪四郎

■さすがに色々と疑問も文句も湧いてきてなかなか観ていて腑に落ちない映画なのだが、東宝特撮映画のなかでは珍味に属する捨て難い味がある。やる気が無いように見えると批判されることもある池部良の主演ぶりも改めて観ると枯れた味があるし、同じくアルバイトと揶揄される千田是也の恬淡とした演技ぶりも、案外味わい深いものがある。この”新劇の巨人”は、演劇ではなかなか演じられない役柄を求めて、好き好んで特撮映画に出ていた節があり、そうした演技的好奇心が脇役演技の中にも微妙な空気を醸し出している。

■そして、何よりも伊福部昭の絶好調のスコアの魅力が最大の牽引力となって、なんだか微妙にお話の歯車がかみ合っていない映画を強引に調子よく纏め上げてしまう。戦闘ロケットの連続発進から始まる一大宇宙戦争はハイセンスなエフェクトアニメの合成が見事なこともあって、異様な高揚感をもたらす。遥かに高揚してゆく伊福部節に対して、戦闘指揮所の池部良千田是也、伊藤久哉らの演技がプロとして粛々とタスクをこなしてゆく淡々としたタッチなのが非常にクールな印象を生んで、サスペンスを醸成するのがこの頃の本多映画の典型的な美点。

関沢新一らしさの一向に感じられない脚本の完成度は低く、クライマックスの巨大円盤も何の工夫も無く呆気なく撃墜されるだけだし、『地球防衛軍』のようなテーマ性も希薄だし、いろいろと当惑するのだが、配役の妙もあり、捨て難い変な魅力があるなあ。

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