骨太の意欲作だけど中盤が弱い『倫敦ノ山本五十六』

基本情報

倫敦の山本五十六 ★★☆
【脚本】古川健【音楽】上野耕路【制作統括】夜久恭裕【企画】右田千代【取材】大森健生 梅本肇【プロデューサー】倉崎憲 里内英司(MMJ) 中村直文【演出】大原拓
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感想

昭和9年に行われた第二次ロンドン海軍軍縮会議の予備会議に海軍代表として出席した山本五十六は戦争回避の一念で英米に対して独自案で交渉に当たろうとするが、海軍上層部の了承を得られず予備交渉は不調に終わり、日本は軍縮条約を脱退することに。五十六は忸怩たる思いで軍を去ろうと考えるが、国民たちは逆に快哉で迎えるのだった。

NHKの独自取材資料に基づくドラマで、当然骨太なんだけど、演劇界から参加の古川健の脚本が意満たずという印象だ。ドラマの脚本としての練度が低いと感じる。演劇界では受賞作多数の硬派なので、ぜひ演劇を観てみたいと感じるのだが、特に予備会議でのやり取りに面白みが出せていない。取材に基づく事実の積み重ねなので動かせない部分があったのだろうが、それにしてもこの部分がつまらないとドラマとしては弱い。

■親友であり非戦派の堀中将との冒頭とラストのやり取りは当然テーマをストレートに語る部分で、ここはシンプルにわかりやすいのでいいのだが、中盤が弱くて、ドラマ的な工夫がない。まあ、第1幕、第三幕も意外なほどドラマ的な趣向がないし、台詞のやり取りがあまりドラマ的ではなく、正直ドキュメンタリー畑の人が書いたのかと思ったのだが、演劇の人だったのは意外だった。まあ、わかりやすいのはいいんだけど、ドラマに綾がない。

■特に中盤は外国人キャストが素人ばかりなので、ベテラン勢の声優を敢えて吹き替えで行ったほうが、効果的だったかもしれない。逆に、伏見宮を演じた嶋田久作なんて、台詞もほとんどないのに、雰囲気と見た目だけで成立するからさすが。ドラマ的な綾が足りない本作で、ここは逆に綾しかない表現だった。
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