残念、もっと耽美的にいこうよ!シリーズ第七作『女賭博師鉄火場破り』

基本情報

女賭博師鉄火場破り ★★★
1968 スコープサイズ 87分 @DVD
脚本:長谷川公之 撮影:中川芳久 照明:泉政蔵 美術:高橋康一 音楽:鏑木創 監督:井上芳夫

感想

■DVDを買ったままになっていたので、新年早々に再見。廉価版のDVDだったけど、画質はリマスター版で比較的良好。ただし、リマスターの時期が古く、全体に白っぽく明るすぎなのは残念。おなじみシリーズ第7作ですね。

■結局の所、お話の主人公は原知佐子のようで、自分がイカサマで指をダメにされたことから、自分の後継者たるべき女賭博師を育てたいという執念のお話。ただ、目的のためなら手段を選ばず、江波杏子成田三樹夫の組長に売ったりするし、イカサマカルタで陥れたりするから、当然ながらコンビは破局する。諦めない女伸江はこんどはヌードモデル上がりの娘(大信田礼子)を賭博師に仕立てて、江波杏子と対決するが、そこにイカサマ骨牌の作者で、昔の旦那の蒔絵師が乗り込んでくるという愁嘆場が展開する。

■正直、もっと面白くなりそうな配役なのに、弾けていない。成田三樹夫原知佐子江波杏子レズビアンじゃないのかと勘ぐったりするわりには、そっちの愛憎関係には発展しないし、親切な組長役が大友柳太朗だけど、完全に役不足で見せ場がない。ベテラン賭博師で内藤武敏が登場するが、これも見せ場不足。いつもは日活映画で正義派として登場するのだが、珍しい役柄なのは、蒔絵師を演じる垂水悟郎も同様。こちらは、ちゃんと見せ場があるが、原知佐子との因縁はご都合主義というもの。むしろ、江波杏子との師弟関係と恋愛関係を彫り込んでほしかったなあ。というか、絶対そっちで耽美的に行ってほしかった。後半の重要人物が大信田礼子というのも、見た目的にも、演技的にも非常に厳しい。

■でも、本来は色恋沙汰には発展しないのが江波杏子のこのシリーズの硬派なところで、江波杏子はあくまでも女として自律して生きてゆくことを志向するし、たやすくオトコ衆とメロメロした恋愛関係にはならない。そこは今見ても新しいと感じる。でも、オトコはだめだけど、女同士ならという含みを脚本家は夢想したのだろうが、多分会社的に同性愛的なニュアンスに難色を示されたため、後半を再構成したという顛末ではないか。勝手な妄想ですけど!

成田三樹夫の黒川組はヌードスタジオを経営していて、この雑協ビルの廊下の狭い場末感たっぷりなセットの念のいった汚しがさすがに大映。ただのコンクリートの壁なのに、そこまで凄惨に汚すかという具合。フィルム上映で観ると、もっと陰影がこってりしているはず。昔KBS京都で観た原盤の方が上映用プリントに近かった気がする。

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