凄いデタラメっぷり!だって清順だから!『けんかえれじい』

基本情報

けんかえれじい ★★★
1966 スコープサイズ(モノクロ) 86分 @アマプラ
企画:大塚和 原作:鈴木隆 脚本:新藤兼人 撮影:萩原憲治 照明:熊谷秀夫 美術:木村威夫 音楽:山本直純 監督:鈴木清順

感想

■企画が大塚和だし、脚本は大御所の新藤兼人なので、基本的に原作の時代背景に沿った、あくまでリアリズム路線の文芸活劇という企画意図だと想像されるのだが、監督が鈴木清順になった時点で、多分大塚和の企画意図はどこかにすっ飛んでしまったと思われる。鈴木清順はいつものように破調の演出で物語を彩る。

■脚本時点でほんとにそうなのかどうか疑問に感じるのだが、基本的に活劇映画で、特に舞台が会津若松に移ってからは、ほぼ地元の硬派軍団との抗争劇に終止する。前半の備前岡山編は良家の子女である道子さんとのラブロマンスの比重が大きく、この部分がこの映画の大きな見どころになっている。ドタバタした活劇部分は、後年のよくできたアクション映画を観ている者には、流石にきつくて冗長に見える。道子さんへ捧げる硬派の純情を描く部分は、いまだにユニークな内容だけに、いっそうそう感じる。

■そもそも曽根中生の『嗚呼!!花の応援団』シリーズや那須博之の『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズのイメージの源泉になっているから、映画史における影響力の大きさは無視できないのだが、実際のところ伝説化するほどの傑作でも快作でもない気がするよね、今観ると。

■そもそも「備前岡山」とテロップを出しながら、台詞は中途半端な関西言葉で、岡山弁の片鱗もないというデタラメさ。もちろん岡山ロケもない。例えば、今平一派などが撮れば、さすがに岡山弁を駆使することになっただろし、そこがこの映画のエッセンスにもなったろうに。中国地方の言葉遣いの荒さが大注目されるのは『仁義なき戦い』を俟つことになる。

■ちなみに、力の入ったリマスターのおかげでピカピカの画質で観られます。アマプラに出てる日活映画は配信用原盤の品質の関係で、時々ノイズやコマ落ち(動きの激しい場面でカクカクする。受信側の機器的な問題ではなく、あきらかに原盤の情報量の不足)が発生するが、さすがにこのカルト作については世界的に評価が高いので、そんなことはありません。正直、過大評価と思いますがね。
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