未解決事件には訳がある!昭和史の闇=公安警察の闇!警察ノワール『クロコーチ』一気読み!

■日本の戦後、昭和から平成に至る何十年の間に起こったいわゆる未解決事件が警察の表組織と闇の結社によって繋がっていて、未解決には未解決に至る理由があったのだ、という陰謀史観、陰謀妄想に基づく警察ノワール漫画で、なかなかの読み応え。テレビドラマが有名だけど、あれは第一部までしか描かない。でもその後はさすがにテレビでは描けないだろうな。

■最初に俎上に乗るのは3億円事件で、その未解決に至る背景に警察の裏互助組織・桜吹雪会という闇組織が介在していたと妄想する。その捜査のなかで3億円事件の真犯人が明らかにされ、3億円のその後のたどった数奇な運命も明かされる。

■そして、70年代に結成され、テロプランを全世界のテロ組織に売る謎の極左セクト反日武装戦線大人は判ってくれない”の暗躍と宗教団体の教祖奪還を狙った原発テロ計画が描かれる。3億円は欧州で資金洗浄赤軍派系組織の壊滅のために使われるうち、百倍にも膨れ上がっているというのだ。確かに不可能ではないよなあ。

■その後ついに登場するのが帝銀事件の闇。帝銀事件の真相を推理するのだが、これは確かに説得力のある仮説。なんでも小林久三も同様の見立てで小説を書いていたらしいから、オリジナルな発想ではないが、かなり説得力あるよね。そして、帝銀事件で使用された毒物の完成形を使用した極右組織”スサノオの桜”による国会テロ計画。冷酷でサイコパス極左テロリスト・鳥尾の来歴が明かされ、13巻の交番襲撃の回想シーンは胸を突く名場面で、このパートではこの怪人物が無垢な若者から虚無的な殺人マシンに変貌し、再び人間の心を呼び覚ますまでを描いて、もっとも感動的。この薄気味悪いおっさんに泣かされるとは。原作者の気持が最も乗っているのは、なぜかこの人物のようだ。

■そして第4部はついにM資金が登場、シリーズを通じて悪の首魁を演じる変態殺人鬼で元神奈川県知事の沢渡が総理を目指し、カルト教団の残党も利用して騒擾状態を演出する。ただ、M資金のミステリーは薄味だし、悪魔的な巨悪であるはずの沢渡の人物造形がいかにも空想的なので、あまり盛り上がらない。どこかの外国から潜入した天才的なスパイで、幼少期から天才的かつ悪魔的な発想の人間だったという設定だが、まるで説得力がないのが残念なところ。でも神奈川県警の恥、桁外れの悪徳警官・黒河内の一連の事件との意外な関係がそっと明かされるラストは悪くないぞ。

■ちなみに原作のリチャード・ウーって、長崎尚志の別名なのね。編集者出身で『20世紀少年』の共同原作者のあの人。

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