俺はやくざの姐を愛したトンチキ野郎さ『泥だらけのいのち』

基本情報

泥だらけのいのち ★★★
1963 スコープサイズ(モノクロ) 83分 @アマプラ
企画:大塚和 脚本:馬場当、丹野雄二 撮影:高村倉太郎 照明:高橋勇 美術:中村公彦 音楽:奥村一 監督:堀池清

感想

■白タクをしのぎとする青年(山内賢)は、男気のあるヤクザの兄貴分(葉山良二)に見込まれて組に出入りするうち、その姐(久保菜穂子)に心を寄せてゆく。代貸が喧嘩騒ぎで入獄すると仕事で赤子の面倒を見られない姐に代わって、赤ん坊の面倒をみるはめに。。。

■というお話で、大塚和の企画なので社会派勤労映画かとおもいきや、あらぬ方向にネジ曲がる、かなり変な映画。山内賢には和泉雅子という恋人がいるのに、やくざの姐と知り合うと、彼女に惹かれてゆくし、三角関係のメロドラマかとおもいきや、仮の父親としてこどもを育てるお話に転調して、青春映画なのかメロドラマなのか、股旅映画なのか、いろんなジャンルが混交して、いわくいいがたい珍しい映画になっている。

山内賢には年上の女性を思慕する路線があり、『その人は遠く』などもその代表作だが、本作もその路線を踏襲するものだろうか。和泉雅子は準主役で登場するものの、扱いが小さい。でも、『非行少女』も撮ったキャメラの高村倉太郎の撮影が妙に念入りで、素晴らしく流麗な柔らかいタッチで和泉雅子のアップを描くので、陶然とする。さすがに名キャメラマンだなあと感心。

■しかし、何が言いたいのかはよくわからない映画なので、訴求力は弱いよね。青春映画にしても、リアルな話ではないし、むしろ時代劇にでも仕立てたほうがしっくりくる気がする。主人公はしまいにはホントのヤクザになってしまう転落物語でもあるのに、テーマが定まらない。大塚和の企画意図はどこにあったのだろうか。

参考

『その人は遠く』も大塚和の企画で、脚本まで書いているので、完全に路線を踏襲したものでしょうね。監督も同じ堀池清だし。
maricozy.hatenablog.jp

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