わたし白血病なの。でもその件は回収しないから気にしないで!『北国の街』

北国の街 [DVD]

北国の街 [DVD]

  • 発売日: 2007/05/03
  • メディア: DVD

基本情報

北国の街 ★★☆
1965 スコープサイズ 92分 @DVD
原作:富島健夫 脚本:倉本聰 撮影:柿田勇 照明:高橋勇 美術:柳生一夫 音楽:池田正義、小川としひこ 監督:柳瀬観

感想

新潟県十日町の雪景色を舞台に(ロケは長野県も)、高校三年生の海彦(舟木一夫)が通学列車で見かけた娘雪子(和泉雅子)と恋仲になり、互いに東京の大学へ進学することを約束するが、絹織物の職人だった海彦の父(信欣三!)が病気で倒れると、進学を断念する。いっぽう、娘は白血病で余命数年であることを言い出しかねていた。。。
■という青春映画に、取ってつけたような、漫画的な番長役で山内賢が登場するという、なかなか混沌とした映画。一応原作ものだが、原作はあまり踏襲してないらしい。そもそも、番長たちも和泉雅子にゾッコンという脇筋も要らない気がする。とことん漫画的なのだ。
■一方、舟木一夫和泉雅子の初恋の発展はなかなか丁寧に描かれ、特に満員の機関車両に飛び乗って二人が急接近する場面からの流れは哀調を帯びた音楽も秀逸で、結構な名シーン。風に飛ばされた舟木の帽子を探して線路を二人で歩く場面もロケ撮影の成果満点で素晴らしいし、帰りが遅くなって雪の夜に駅で別れる二人の場面も、木村大作レベルのロケ撮影が圧巻。撮影は日活崩壊後にテレビに流れ、「スペクトルマン」の本編を撮る柿田勇。舟木と和泉の二人の演技も非常に良くて、柳瀬観という監督は結構上手い人なのだ。実際『仲間たち』も良かったし。
■ただ。ロケ撮影にはかなり凝ったようで雄大で情感ある良い画を撮っているのに、学校の教室の場面などはステージ撮影でいつもながらのベタベタの照明で撮っており、そのちぐはぐさは勿体ない。姫田真左久なら実際の学校で実景を背景に撮るところだ。この学校の教室をロケで撮るか、ステージで撮るかが、日活本線の映画と日活リアリズム路線のメルクマールになっている。(大塚和の企画ならロケ撮影になっただろう)
■しかし、一番問題なのは倉本聰の脚本で、多分舞台裏ではいろいろとゴタゴタがあったのだろう。和泉雅子は唐突に独白で白血病を明かすし、難病映画になるのかと思えば、何もなかったように一人で東京に旅立って終わりという、かなり強引な展開。白血病は何のための設定だったのか??ひょっとして、続編の製作を狙っていて、第一部終わりというつもりだったのだろうか。東京編が作られる予定だったのか?お話はすべてを途中で投げ出して唐突に終わる。
■本格主演作はこれが初めてという舟木一夫が妙に良くて、声がいいのは当然として、特にアップよりロングの立ち姿が雪景色にシャープで映える。相方の和泉雅子も非常にこなれた演技で、上出来の部類。浦山桐郎の『非行少年』で鍛えられた成果が心理描写に生きている。和泉雅子浦山桐郎にシゴカれた『非行少女』の後でも、作品によっては全く生硬で良くないことがあり、びっくりするくらい大根だったりするから油断がならないのだ。
www.nikkatsu.com


参考

柳瀬観という監督はテレビで「マリンコング」とか「マイティジャック」も撮ってますが、日活でいい映画を撮ってますよ。『仲間たち』は、脇役ながら舟木一夫の好人物ぶりに惚れますよ。
maricozy.hatenablog.jp

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