嫌いになれないダメな奴!南洋怪奇幻想譚『パラサイト 禁断の島』

基本情報

prey ★★
2019 スコープサイズ 85分 @DVD

パラサイト 禁断の島 [DVD]

パラサイト 禁断の島 [DVD]

感想

■個人的に年末ブラムハウス祭りを開催中です。いいですね、ブラムハウスの低予算ホラー路線。なにより気楽に楽しめるのがいい。妙に長かったり、大仰に構えたりしない、気楽にふらっと怪奇ロマンの世界に浸れる、下町の定食屋のような気安さとそこそこの上手さ(美味さ)が身上のプロダクション。
■さて第二弾は、心理的なトラウマからの立ち直りのためのサバイバル講習でマレーシアの無人島にたった一人で残された青年が、そこでいないはずの不思議な少女と出会うことから、島の隠された秘密に触れることになるという、昔懐かしい古風な怪奇ロマン映画。しかも、島には少女のほかにその母親もいて、少女からは母親には気を付けろと注意されるので、主人公の青年はすっかりその気に。お話の展開はなんとなく分かりますよね。その通りに転がってくれるので嬉しいです。
■監督はフランク・カルフンという知らない人。ブラムハウス作品は基本的に脚本に見どころがなければ着手しないはずなのだが、時々、なんでこれ作ったの?という駄作が混じる。どちらかとえいば、本作は駄作の部類。1960年代に量産されたC級ホラー映画を思わせる、全く新味のないサバイバル風味のホラー映画。この監督は露骨に下手で、孤島のジャングルという舞台設定を映画的に活用できていない。撮影も妙に貧乏くさくて、マレーシアのロケに出た時点で予算が払底してたって感じ。いまどきのハリウッド映画のルックではない。昔のC級ホラーの雰囲気を狙って、意図的に安いフィルム撮影のルックを再現したのかもしれないが。
■最終的に編集でなんとか恰好を付けようとしたものの、そもそも現地ロケでの素材がうまく撮れていないのでどうしようもなかったという感じが、編集構成の歪さからひしひしと伺える。いまさら追加撮影する予算を出すのも無駄という現実的な判断があったのだろう。
■主演のダメな若者を演じるローガン・ミラーという俳優も、もう少しルックス優先で配役してもらわないと、見栄えが悪いですよね、さすがに。確かに小太りで、衣服もダルで、リアルな駄目さ加減は出ているのだが、ほとんどこの青年の独り舞台なので、さすがに映画がもたない。
■せっかくのオカルト設定も実に雑で、全く捻りも無いし、恐怖演出にも全く工夫がない。実際のところ、この程度のお話なら、誰でも考え付くレベルだ。ジャングルの描写も全くダメで、こんなことなら、ロケではなくオールセットで撮った方がよほど雰囲気が出ただろう。(ただ、その方が確実に予算を食う)
■でも、南海の孤島で神秘的で危険な美少女と愛し合うという南海幻想と怪奇の融合は素材としては非常に魅力的で、もっといい脚本でもう少し予算をかけて丁寧に作ってくれれば、いいものができる可能性はあったはず。香山滋的な怪奇ロマン映画がありえたはずなのだ。という意味で、個人的には捨てがたい映画なんだな。普通の人にはおススメできないけどね。

参考

海鰻荘奇談 香山滋傑作選 (河出文庫)

海鰻荘奇談 香山滋傑作選 (河出文庫)

海鰻荘奇談 (文庫コレクション 大衆文学館)

海鰻荘奇談 (文庫コレクション 大衆文学館)

怪奇探偵小説名作選〈10〉香山滋集―魔境原人 (ちくま文庫)

怪奇探偵小説名作選〈10〉香山滋集―魔境原人 (ちくま文庫)