実はクールな女性映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』

感想

ワシントンポストの女社主は自殺した夫から会社を委ねられたものの、経営者としての手腕を発揮できず、役員たちも力量不足と囁いていた。そんな1971年、ベトナム戦争と戦争対策の裏情報が満載されたペンタゴン・ペーパーズがリークされ、編集主幹は一面掲載を主張するが、株式公開したばかりのタイミングで政府に圧力をかけられると会社はどうなるのか、しかも機密文書の作成を指示したのが女社主の親友のマクナマラ国防長官でもあり、社主はどう判断するのか、記事のタイムリミットは刻々と迫る。。。
■というスピルバーグによる実録映画。もう何も言うことがないよくできた映画で、優等生的なクールな社会派映画。前半はどこに映画の核があるのかを敢えてはっきりさせず、群像劇的に展開するが、後半で編集主幹と女社主の激しいやり取りのなかでこの映画の核は女性映画であることが明確になってくる。
■だから前半と終盤のメリル・ストリープの変化がこの映画のテーマなのだ。もちろん権力の監視というマスコミの使命を打ち出した感動的なクライマックスを迎えるのだが、1971年当時の社会の様々な舞台での女性のポジションを映画全編にわたって配置している。ワシントンポストの女性記者の問題、編集主幹の妻、社主の娘、裁判所の下働きの女性、それらが前半は男性の視点で描かれ、終盤はメリル・ストリープの成長とともに女性の視点に移行する。このあたりの脚本の構成は微妙な匙加減でおもしろい味になっている。世紀の大スクープを抜いた男たちの話ではなく、そのためのもっとも重大な判断を正確に下した女性の物語として構築している。もちろん、脚本を女性が書いているからそうなるわけだが、ちょっと虚を突かれた。
■はなから強い女の物語ではなく、危機に直面して生まれ変わって強くなり、社主にふさわしい人間に成長する女の物語なのだ。だから静かに感動的なのだった。ジャーナリズムの映画であることは当然で、政府の不正を告発する社会正義の物語に違いないのだが、女に新聞社の社主などできるものかという差別と偏見を打ち破る社会正義のお話でもあったのだ。

参考

スピルバーグがほとんど同時に製作、撮影していたのがこれ『レディ・プレイヤー1』ですね。完全に息抜きのために製作したのではないかという空虚な映画でしたね。違う意味でビックリしましたよ。
maricozy.hatenablog.jp