VICTOR SX-F1という素性不明のスピーカーを愛玩する【レビュー/評価】

■VICTORの昔出していた密閉型スピーカーの音色が好きなので探索しているうちに見つけたのが、SX-F1という素性不明のスピーカー。F1シリーズというハイコンポに付属した、つまり特定機器専用に設計されたスピーカーらしい。もちろんVICTORお得意の密閉型。あまり評判も聞かないスピーカーだけど、密閉型だし、昔のVICTORなので悪くはないだろうと中古を購入してみた。お値段が妙に安いのであまり期待はしてませんでしたが。

■到着した現物を見て驚いたのは、スピーカー、本体ともに素材が非常に安っぽいこと。さすがにハイコンポの企画製品とはいえ、これほど質感の低いスピーカーは見たことが無い、というレベルで、もちろん重量も軽い。これでちゃんとまともに鳴るのかと大いに心配になる。さすがに日本製ではなく、台湾製というのも納得。台湾製のスピーカーって聞いたことがないなあ。要はコストダウンが至上命題という感じの製品ですよ。

■ところが、これ鳴らしてみると??・・・・!!となる。音色はしっかりとVICTORらしい密閉型のいいところが生かされていて、人の声の帯域がハキハキしているし、小型ブックシェルフにしては少し大きめのウーハー(16cm)が適度に低音の質を確保している。ブーミーな低音のだぶつきは生理的に嫌いなのでこうした密閉型の特質はありがたいし、ハイ上がりながら音色についてはバランスが良くてほとんど不満がないのだった。暫くメインで鳴らしていて、ほんとに嫌味のない音色なので重宝していた。JAZZだって、ちゃんと聴ける。

■それにしても素材の安っぽさと工作の精度の低さは特筆もので、それでいながらちゃんと良い音を鳴らすという信じがたい謎のスピーカー。スピーカーって、素材とか加工とか、こだわればキリがないけど、案外そこそこで十分なのかもしれませんよ。

■ちなみに、SX-F1Sという改良版が存在して、ハイファイ堂の記事によれば、1994年発売、 6Ω 87dB W209×H348×D259mm 6.5kg というスペックなので、ほぼそれに準じていると思う。能率が低いので、ボリュームはかなり上げないといい音が出ないが、大音量でもうるさくないのが密閉型の美点。

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