感想
■近松の『出世景清』を橋爪功のほとんど一人芝居のように仕立てた異色作。もともとが人形浄瑠璃なので、景清とその娘以外の登場人物を特別にあつらえた人形が演じる。橋爪功、老いて益々、というかちっとも老いてないのが凄い。橋爪功の舞台は初めて観たけど、演技的にはテレビドラマよりもさすがに濃いめで、演技も誇張しているが、台詞廻しが所謂時代劇調(歌舞伎調)ではなく、橋爪功らしく崩して発話している。
■平氏滅亡後に源頼朝に一矢報いんと執着する景清はしくじって京都に逼塞すると昔なじみの遊女阿古屋のもとに身を寄せるが、その兄が訴人したことから景清は捕縛される。景清に攻められた阿古屋は身の証のため二人の子とともに自害する...という血なまぐさい惨劇が続く残酷時代劇。世話物とは違う近松の傾奇の志向を感じさせる。最後には、仇が見えるから迷いが消えないとばかり、頼朝の前で両眼を抉る。
■そして、最期には浄瑠璃、歌舞伎というよりも能のような幕切れが用意されている。殺陣もあり、人体真っ二つの大流血もある(赤い布で表現)派手な演劇で、展開も早いので退屈はさせない。でも、もともとの文楽が観たくなったなあ。
■なお、橋爪功は本公演の演技により2016年度芸術選奨で文部科学大臣賞を受賞し、授賞式では『シン・ゴジラ』の庵野秀明らと並んで記念写真に収まっている。