Machine Gun Preacher
2011 スコープサイズ 129分
APV
■アメリカの粗野で乱暴なヒルビリーのサム・チルダースというおっさん(ジェラルド・バトラー)がキリスト教に救いを求め、人助けに行ってみたスーダンで「神の抵抗軍」の子供たちへの蛮行に触れる。だが、私財をなげうって孤児院を作り、子供たちを助けようとするうち、次第に神の教えを超えてゆく・・・という実話を映画化した問題作。監督のマーク・フォースターは次回作として『ワールド・ウォーZ』を撮った人。
■「神の抵抗軍」による子供たちの誘拐、虐待、少年兵化という許されざる行為から子供たちを救い出すには神の教えを説くだけでは実効がなく、自ら銃撃戦に打って出る覚悟、手を汚す覚悟が必要なのだと訴える主人公に対して、さああなたはどう思いますか?と問いかける。序盤はどうなることかと気をもむが、後半はしっかり主人公に感情移入できるように撮られていて、映画としてはかなりよくできている。『ワールド・ウォーZ』では無駄にキャメラを振り回すスタイルでイライラさせたマーク・フォースターだが、本作は妙に落ち着いた映像スタイルで、じっくり見せる。
■目的のためには手段を択ばない主人公に、冒頭で残虐行為に巻き込まれた少年が語りかける場面も定石ながら見事な説得力で、ジェイソン・ケラーの脚本もよくできている。(まあ、できすぎた少年なので、ご都合主義の批判もありうる。)実際、「神の抵抗軍」を率いるジョセフ・コニーという男も霊媒として神がかりな活動として残虐行為を行っており、敵を憎むあまり自分も敵そっくりになっていたことに少年が気付かせてくれるわけだ。
■マーク・フォースターは007も撮っているけど、そっちの資質じゃない気がするなあ。『ワールド・ウォーZ』は途中まで傑作だと思ったけど、それはホラー演出やスペクタクル演出ではなく、社会派的な視点が目立つ場面だった気がする。