JOSHUA
2007 ヴィスタサイズ 106分
DVD
■非常に早熟な少年が、妹が生まれたのをきっかけに、両親を精神的に追い込んでゆき、妹を亡き者にしようとしているのではないか?というお話をサスペンス豊かに描いた異色スリラー。悪魔が登場するオカルト映画ではない。筋立て自体はいくらでもあるパターンだが、その語り口と終幕の回収の仕方に新味があり、なかなかの秀作になった。監督はジョージ・ラトリフという人で、サム・ロックウェル&ヴェラ・ファーミガの夫妻に、ヤコブ・コーガンがジョシュア役で好演する。演技合戦によりサスペンスを盛り上げてゆく見応えある一作。
■以下、ネタばれですが、要はダメなオトナにNOを突きつける早熟な少年が親を見限る話で、その鮮やかな策略は少年の悪意を確信させはするが、最終的には後味が悪くないという不思議な映画。そこは『オーメン』とは違うところで、要は世代交代を戯画化して描いた映画である。
■遡って考えてみれば、サム・ロックウェル&ヴェラ・ファーミガの夫婦はオトナとしてかなりダメで、そのエピソードやディテールがキチンと描きこまれているので、少年の判断が決して間違ってはいない気がしてくるのだ。でも、ダメなオトナとしてはそこまで厳しく処断しなくても、と当然思うことになり、少年の異常性が際立ってくることにもなるのだが、音楽を使った終幕の趣向が上手く決まっているため、少年のほうが正しい気がしてしまうのだな。その心理的誘導の仕方がこの映画の非常に上手いところでユニーク。
■おなじみヴェラ・ファーミガはここでは少年にとことんやり込められるダメ母の醜態を見苦しく演じてみせて、映画に奉仕する演技姿勢を貫く。同じことはサム・ロックウェルにも言える。低予算映画だけど、充実作。