若者の旗 ★★★☆

若者の旗
1970 スコープサイズ 101分
日本映画専門CH
脚本■山内久
撮影監督■宮島義勇 照明■鈴賀隆夫
美術■山下宏 音楽■佐藤勝
監督■森川時久

■三部作の最終作は昭和45年当時の日本の姿を、四男の松山省二を主役として描き出す。大学受験に失敗して自動車のセールスマンになり、エコノミックアニマルで結構、金とセックスが大切でいいじゃないか、と言い切る現代っ子が、何を掴み取るか?

■松山省二がスーツを着て飛び回っているともう怪奇大作戦ノムさんにしか見えないのだが、山本圭のエピソードでは公害問題の顕在化も示され、人間はなんのために生きてるか、わかるか?と究極の質問をぐさりと突きつけ、その答えもちゃんと披瀝してくれる山本圭に惚れる。

■佐藤勝の映画音楽も既に不穏で『日本沈没』のムードを予兆しているし、綺麗なモノクロ撮影で昭和45年の空気感を切り取ったキャメラも秀逸。撮影監督は宮島義勇だけど、実際の撮影はたじままさきなどがキャメラを担当している。美麗なリマスター版の放映なので、本当にモノクロ撮影の美しさは眼福。

■そして、特筆すべきは、同じみの佐藤家での乱闘が始まりそうになると、佐藤オリエとか山本圭が涼しげな顔で円卓からビールをどけたり、ご飯を下げたりしはじめるコメディ演出の秀逸さ。後のテレビドラマでおなじみになったお茶の間での乱闘は既にこの頃に定型として完成されていたのだ。

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