若者たち ★★★☆

若者たち
1968 スコープサイズ 87分
日本映画専門CH
脚本■山内久
撮影監督■宮島義勇 照明■鈴賀隆夫
美術■平川透徹 音楽■佐藤勝
監督■森川時久

■大ヒットしたテレビドラマを受けて制作された映画版だが、テレビの後日談ではなく、実質的にはテレビ版のリメイクとなっているようだ。ドラマ的には夏圭子演じるマチ子と次郎(橋本功)オリエ(佐藤オリエ)の関係を中心としており、佐藤一家のレギュラーメンバーは言うまでもないが、いかにも60年代的な暗さを抱えた夏圭子の熱演が特に印象に残る。

■テレビ版に比べて演出は少々過剰気味で、御なじみの佐藤家での口げんかからちゃぶ台返しの乱闘に到る見せ場を映画ならではの堂々とした演出と演技で見せる。そして、そこにはコメディ演出としての自意識もうかがえる。特に長男の田中邦衛と三男の山本圭の舌戦は壮絶で、山内久の書いた台詞の熱量の凄さには圧倒されるし、山本圭の舌鋒の鋭さは到底他の役者の真似できるところではない。『新幹線大爆破』とか『皇帝のいない八月』の山本圭はもちろん素晴らしいが、『若者たち』を観ないで山本圭を云々するのはナンセンスというものだ。と激しく自戒した次第。

佐藤オリエの恋人が、一見誰だか見当がつかないほどすっきりした青年、石立鉄男であって、しかし役柄は広島での被爆者で、自分の生き方に迷っているという設定。このエピソードは第2作で美しく開花することになる。

俳優座の製作なので俳優座を中心とする若手俳優が総動員されて、キャストも豪華だし、昭和42年の時代背景もリアルに織り込まれているし、忘れ去られるには惜しい力作である。

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