紙の月 ★★★☆

紙の月
紙の月
2014 スコープサイズ 126分
TOHOシネマズ二条
原作■角田光代 脚本■早船歌江子
撮影■シグママコト 照明■西尾慶太
美術■安宅紀史 音楽■ little moa、小野雄紀、山口龍夫
監督■吉田大八

■今や日本映画のホープ、吉田大八監督の最新作。撮影はCM業界で有名なシグママコト。不倫相手に貢ぐために銀行の金に手を付けた銀行員の転落を、特異な疾走感で描きたした意欲作。ではあるのだが、ドラマとしては少々疑問も残るなあ。
■吉田大八監督の演出手腕とCM業界で磨いたセンスは伊達ではなく、松竹映画らしさと独特の透明感ある音楽センスでぐいぐいと観客を引き込む。そのうえに非常にメリハリの効いた演出で、非常にわかりやすく見せ場を押し出す。その通俗性も含めて既に大看板の貫録がある。
■でも、墜ちていくことで輝く出す女というドラマはロマンポルノでも多数あり、本作では正直墜ちてゆくドラマとしては詰めが甘い。むしろ、逸脱してゆくことで輝きだし、疾走力を獲得してゆく爽やかなドラマを目指しており、それは原作とは多分かなり違うと思うが、吉田大八の今回の挑戦はそこにあったらしい。
■その意味ではリアルな話はなく、大島優子小林聡美宮沢りえの内面をそれぞれ代弁しているように、銀行の支店を舞台にした性格劇といえる。業務上横領の手口を具体的に描いてサスペンスを醸成することに成功しているが、社会劇としてはリアリティに欠け、象徴劇として観られることを要求しているようだが、正直そこが物足りないと感じた。もっと銀行内部のリアルな対応を、個人的には見たかった気がする。
■銀行内部のリアリティの在り方をどう定義するかは、近藤正芳の配役と演技によって規定されており、それは決してリアル志向ではないことは明らかだ。勿体ないなあと正直感じるところだ。