桐島、部活やめるってよ ★★★☆

桐島、部活やめるってよ
2012 スコープサイズ 103分
Tジョイ京都
原作■朝井リョウ 脚本■喜安浩平、吉田大八
撮影■近藤龍人 照明■藤井勇
美術■樫山智恵子 音楽■近藤達郎 VFXスーパーバイザー■西村了
監督■吉田大八

■バレー部の部長で何でも出来る秀才の桐島君が突然部活を辞めるとの噂が駆け回ると、彼に近しい生徒たちにささやかな波紋を広げてゆく。という地味な小さいお話をトリッキーな話術で綴った青春映画だが、トリッキーさだけでない、普遍的な青春映画になっている点が嬉しい。結果的に、みんな部活に青春を打ち込もう!というストレートなお話になっている(と思う)のも好感触。清々しくてとてもよろしい。

■ビデオではなく8ミリにこだわる映画部を登場させながら、映画自体はビデオ撮影というのが非常に皮肉なのだが、近藤龍人キャメラは素晴らしいので、是非映画館で観るべき。最近はビデオ撮影も画質が非常に向上しているので、予算さえ潤沢なら画質的にはフィルム撮影と大差ないレベルになっていて、本作もフジフィルムで撮影して淡彩に仕上げたプリントと言われても納得の映画的なルック。特にシネスコサイズを生かした構図が見所で、女子4人の顔を縦に並べた構図の人工美など、70年代くらいのATGタッチともいえる。ラストのクレジットが白バックに明朝体の黒字で出るところなんて、渋くて涙が出そう。

■個々のエピソードについては十分に描ききれていない部分もあると思うが、登場人物が屋上に集結するクライマックスや夜のグラウンドでのラストシーンなど、素直に胸にぐっと来るよ。「11人もいる!」での軟弱ぶりが素晴らしかった神木隆之介がここでもいい味を出しており、難儀なオタクぶりを好演する。脇では野球部のキャプテンを演じた高橋周平が素晴らしく、一番感動的なキャラクターになっている。彼のエピソードがラストに直接結びつくので、非常に重要な役どころなのだ。彼の不器用な一途さにはホントにぐっと来たよ。このあたりも微妙に70年代イズムが感じられるんだけどなあ。

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