96時間 リベンジ ★★★☆

Taken 2
2012 スコープサイズ 91分
DVD

■おなじみリーアム・ニーソンがフランスの裏社会で鬼のように大暴れして人身売買組織を壊滅する『96時間』の続編で、今度はリーアム伯父さんと嫁が拉致され、リーアム伯父さんが脱出するために娘を遠隔操作するという趣向。あまりいい評判も聞かなかったので正直舐めてたけど、いやいやこれはなかなかの快作で、秀作。オリヴィエ・メガトンの演出はあまり深く考え込まないタイプだが、脚本の企みはちゃんと生かされている。

■まず秀逸なのは前作のプロットを裏返しながらサスペンスを生んだ点で、これは唸る。オリヴィエ・メガトンもちゃんとサスペンスのツボは押さえており、中盤大いに盛り上がる。イスタンブールのロケ撮影がここで大いに魅力を発揮するのだが、自分が脱出し、嫁を奪還するところまでで十分おなか一杯の満足感を味わえる。

■それだけでなく、この映画に複雑な陰影を与えているのが、前作でリーアム伯父さんに虐殺された若者の親族が復讐にやってくるという筋立てで、アメリカを震撼させる復讐の連鎖を持ち込みながら、超大国アメリカとその圧倒的な暴力の前に生き延びるための悪さえ許されない持たざるものの今日的な対立構造を炙り出す。裏社会でしか生きられない貧困な移民層を容赦なくぶち殺すリーアム伯父さんのアメリカ主義に対するアンチテーゼがしっかりと描かれて、一方で能天気そのもののバカ親父ぶりを発揮するリーアム伯父さんと残酷な対比が描かれる。このお話自体が、娘が自動車免許の仮免をいかにしてパスできたかとうアホらしい物語として回収されるあたりも、ホントに意地が悪い。フランス人によるアメリカへの当て擦り映画。完結編は絶対映画館で観るぞ!

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