サマーウォーズ ★★★

サマーウォーズ オリジナル・サウンドトラック

サマーウォーズ
2009 ヴィスタサイズ 114分
MOVIX京都(SC3)
脚本■奥寺佐渡子 アクション作画監督■西田達三 デザイン■上條安里(OZ美術デザイン) 音楽■松本晃彦 監督■細田守

■夏休みアニメ映画特集。細田守が自身の出世作デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」を長編アニメとしてリメイクした映画で、一般の親子観客にも受け入れやすいように地方の旧家の大家族が結束して地球規模の危機に立ち向かうという(セカイ系の?)プロットに焼きなおしたものだ。実際、夏休みの帰省シーズンにピッタリな企画であり、間口の広い敷居の低い大作アニメだ。マニア向けではなく、普通の観客に広く観て欲しいという企画意図と、それを正確に実現した細田守の大人の演出姿勢に感心する。

■しかし、以上の言い方でなんとなく察しが付くように、正直なところオリジナルの「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」の感動には及ばない。デジモンの場合は、キャラクターありきで、しかもそのキャラクターがそれなりにこなれているという助走台があった上で細田守の独特のセンスで弾けて見せたのだが、今回は、例えばOZのアバターのキャラクターでは弱すぎる。正直、アバターには感情移入しにくい。デジモンの場合であれば、テレビシリーズは観ていなくても、いかにも可愛らしいパタモンが集中的に虐められると素直に悪役デジモンに対してこの野郎という気持ちになるのだが、本作ではそこまでの感情移入は成立しない。

■本作のクライマックスが花札勝負というのも、どうだろうか。単純に言って、デジモンアドベンチャーにはロボットアクションの醍醐味があったが、本作ではその要素は捨象されている、それが物足りないよ〜という子供っぽい感想になってしまうのだが、ホントにそうなんだもん。音楽だって、松本晃彦がスケール感の溢れる楽曲を提供しており、決して悪くないのだが、いちど聞いたら耳を離れない有澤孝紀の劇伴には及ばないという気がする。

■ついてに言うと、夏休み映画としては、昨年の「歩いても 歩いても」のシズル感あふれる夏の実感には及ばず、それは田舎の旧家の大家族というものをどこまでリアルに描くかというリアリティの設定の仕方に微妙なところがあったのだろう。まるで城のような家屋敷というのは明らかにリアリティを超えているわけだが、その舞台設定と、大家族の間の結束というものに、説得力を持たせようとする方向性に無理がある気がしてならない。どうもしっくりと腑に落ちないのだ。


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