この世界の片隅に

終戦記念スペシャルドラマ この世界の片隅に [DVD]
■原作・こうの史代、脚本・浅野妙子、音楽・羽毛田丈史、演出・佐藤東弥による終戦記念ドラマ・スペシャル。VFXスーパーバイザーは西村了で、マリンポスト、モーターライズ等が参加して、マット画合成が多数登場するが、シーンによって映像の完成度はばらつきが大きい。遊郭の焼失後の合成カットなど、非常に細密でいい感じだが、速水もこみちの洋上シーンなど、非常に苦しい。これはVFXだけでなく、下画の撮影自体に問題がある。そもそもステージ撮影の外景の描写がスタジオドラマ丸出しのタッチで、ロケ撮影と馴染まない。
■ドラマとしても、正直あまり感心するところが無く、原作漫画はもっと切実に胸に迫る要素があるのだろうが、ちょっと情感的なシーンになると、さあ泣いてください的な大げさな楽曲がせりあがってくる演出は噴飯ものだ。ヒロインが爆弾で右手を喪い、右手にまつわる人々とエピソードを回想する場面などは、さすがにユニークな発想だし、昭和の普通の女の右手が辿ってきた生活の歴史が鮮やかに浮かび上がる秀逸な趣向なのだが、それ以外のところに良いところが無い。「夕凪の街 桜の国」のような血を吐くような訴えは、ここには無いのだ。原作漫画には、きっと”何か”があるに違いないと想像するのだが。