ヒックとドラゴン ★★★★☆

HOW TO TRAIN YOUR DRAGON
2010 スコープサイズ 98分
ユナイテッドシネマ大津(SC7)

■「リロ・アンド・スティッチ」のクリス・サンダースとディーン・デュボアが何故かドリームワークスで作り上げたCGアニメ。しかも3D。家族及び女子向きにドラゴンの可愛さとか泣けるとかいった芸の無い宣伝が繰り広げられているが、監督コンビの怪獣愛が横溢する怪獣アクション映画の傑作である。怪獣好きは絶対に必見。今回観たのは2Dの吹替え版だが、映像設計は完全に3D向けに作られており、そのおかげで2Dで観ても映像の奥行きが実感できる。3D映画は嫌いだが、これは3Dで観てみたい気になる。
■物語は単純なものだが、キャラクターを端的に描き込む話術とCGアニメの演技はディズニー仕込みの正統派。しかも、何故か映像設計に現代最高の撮影監督ロジャー・ディーキンスが参加しており、リアルな絵作りに貢献している。室内のシーンでの光源にこだわった陰影作りや、キャラクターに木陰が細やかにかかるといった場面などに、その成果が表れているのだろう。
■単純な物語の中に、戦時体制化のアメリカの苦悩が埋め込まれており、ちゃんと現代的な寓話になっているところがディズニー学校の優等生らしい。ヒックと父親の関係も、案外紋切り型ではなく、家族とはいえ互いに不確かな人間関係の中で、手探りで関係性を組み立てようとしているところに、作者の工夫を感じるし、吹替え版の配役の妙もあったかもしれない。
■とにかく、ヒックとドラゴンの飛翔場面は、数あるこの種のアニメの中でも傑出しており、このシークエンスを観るだけで幸せな気分に浸ることができる。空を飛ぶことの快感を実感させてくれる。ドラゴンの翼が捉える空気の塊感、翼で急制動をかける時の風圧、徐々にスピードを増す高揚感、宮崎アニメの子供たちがここにもいる。
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