リロ&スティッチ ★★★★

LILO & STITCH
2002 ヴィスタサイズ 86分
DVD

■極私的夏休みアニメ映画特集。3DCGアニメ全盛で既に食傷気味の今見直すと、手書き2Dアニメの美しさと楽しさが堪能できるディズニーアニメ。手書きアニメとしては、日本のアニメの技術的洗練には及ばないが、本作ではとにかくスティッチというキャラクターを描きつくした表現力には素直に平伏する。とりあえず、昔DVDで観た時の感想を旧サイトからサルベージしておく。

リロ&スティッチ スペシャル・エディション [DVD]
宇宙人の科学者によって都市破壊活動用に遺伝子操作で生み出された小さな怪物が地球に逃げ込むが、その着陸先は大都会ならぬハワイだった。そこで、両親を事故で亡くし姉とともに暮らす少女リロと出逢った怪物はスティッチと命名され、家族の一員に加わるが、怪物の回収を命じられた宇宙人科学者も彼を追って地球にやって来るのだった。
 ピクサーのCGアニメは見逃せないが、ディズニーのセルアニメは基本的にパスと決めていたせいで見逃していた映画だが、実はなかなかの傑作。
 このスタッフは明らかに、ディズニーのミュージカルアニメよりも、ピクサーのCGアニメに映画作法の多くを学んでおり、音楽の使い方、アクションの設定、キャラクターの可愛らしさの表現、細かなギャグの積み重ねなどなど、ピクサーのアニメの美質を実に巧くディズニーアニメ本隊に移植することに成功している。
 都市破壊用に生み出されたスティッチが身の回りのものを手当たり次第にぶち壊す描写や電気屋のテレビでバート・I・ゴードンの巨大蜘蛛映画に見入る描写など、スタッフの心意気のありかが鮮明に現われた細部が嬉しいし、アメリカのアニメではなかなか実現しなかった可愛いキャラクターの造形を、スティッチという捻くれた設定のなかで成功させた演出、作画力はさすがというほかない。
 一方で、リロとその姉との家族崩壊瀬戸際の危うい関係が結構シリアスに描きこまれてテーマの現代性を確保しながら、荒唐無稽なスティッチという存在によって家族を再構成されてゆく様子が、劇映画ならではの調子よさで物語られるカタルシスは、やはり映画ならではの醍醐味というべきだろう。
 ピクサーのCGアニメと古今東西の怪獣映画ファンなら必見と言っておこう。

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