スター・トレック ★★★

STAR TREK
2009 スコープサイズ 126分
ユナイテッドシネマ大津(SC6)

スター・トレック (角川文庫)
■過去に映画化されてシリーズ化もされたものの、興行的にはあまりぱっとせず、製作規模もジリ貧化していったスター・トレックを、超大作として”リ・イマジネーション”したもの。カーク船長やスポックを始めとするエンタープライズの若きメンバーが終結するまでを描く。なにしろカーク船長の誕生から語り起こすというのが下世話な面白さを引き出す。
■しかし、監督はJJエイブラムスなので、ドラマよりもCG濫用によるアクションとスペクタクルの釣瓶うちに重点が置かれている。ILMがメイン担当したVFXのレベルは高く、製作費の大半がVFXに投入されたと推測される。しかし、スペクタクルの見せ場がことごとくハッタリで、ドラマ的必然性よりも見栄えのする派手なアクションをひとつよろしくといったつくりで、激しいキャメラワークも見辛いだけで、劇的なサスペンスを生んでいない。肝心の宇宙シーンも、かつて映像技術が特撮からSFXへと進化していた頃、ILMが世界をリードしたミニチュアのモーション・コントロール撮影による表現に比べ、宇宙っぽさが足りない。というか、映画版第一作でダグラス・トランブルが手掛けた(本作はILMではない)エンタープライズ号の細部を舐めるように飛行する場面の臨場感と物質の塊り感、ジェリー・ゴールドスミスの劇伴による高揚感と陶酔感、そして宇宙に拡がる無限の夢をかき立てる名シーンなどと比べると、なにしろ叙情が足りないのだ。スクリーン上の深遠な宇宙空間を巨大な宇宙船が悠然と横切るだけで感動できるのが宇宙映画(?)の醍醐味のはずなのに、今回はそれを狙ったシーンもあり、エンタープライズ号の登場シーンなどは正直グッと来るところもあるのだが、マイケル・ジアッキノの音楽が妙に、というか近年のハリウッド映画流に筋肉質なのも優雅さを削いでいる。
■”リ・イマジネーション”と謳いながらレナード・ニモイが登場するのも中途半端でいけない。作劇としても感心できる工夫ではない。ザカリー・クイントが若き日の未熟な青年スポックを好演しているのだから、彼に任せればよかったのだ。

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