テシス 次に私が殺される ★★★☆

TESIS
1996 ヴィスタサイズ 125分


 映像学科の女子大生アンヘラ(アナ・トレント)の担当教授が謎の死をとげ、彼女は教授の見ていたビデオテープがスナッフビデオであることを知る。同じ学科のアングラビデオマニアのオタク青年(フェレ・マルティネス)とともに調査を進めるうちに、被害者の女子大生の友人(エドゥアルド・ノリエガ)がビデオを撮影したと思しきビデオカメラを所持していることが判明する。殺人ビデオの撮影に大学関係者が関与しており、図書館の地下書庫に秘密が隠されているらしいのだが・・・
 アレハンドロ・アメナーバルの長編第一作で、23歳のときに撮影したものらしい。スナッフ映像を主題とした映画では「8mm」が有名だが、完成度は本作のほうが上で、スナッフ映像に惹かれる人間心理の後ろ暗さに鋭い批判を試みる、志も高い意欲作である。
 中盤に登場するヤバイ教授がハリウッド映画の商業性を批判する件がその後で生きてくる巧いエピソードがあり、ハリウッド映画に対する皮肉も効いている。それでいてメタホラーであった「スクリーム」に対する対抗心が顕著であり、しかしアメリカ人好みのこけおどし演出はほとんど無く、直接的な残酷描写も必要最小限で、着実な演出でサスペンスを構築してゆく正攻法の映画は、老成を感じさせるほど腰が据わっている。
 冒頭とラストシーンが呼応して、人間が誰しも隠し持つ、残酷なこと、他人の不幸や悲惨に対する抑えがたい好奇心の存在を的確に炙り出してゆく構成も見事なもので、ことにラストの幕切れの鮮やかさは特筆に価する。ハリウッド映画を仮想敵として、乗り越えて見せた瞬間だ。

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