2008年私的ベストとは・・・

■新年、明けましておめでとうございます。今年も飛び飛びに更新する予定なので、気長に、暖かく見守ってくださいね。
■昨年はなんとなくうやむやのうちに見送ってしまった私的映画ベストを記録しておきましょう。
◎日本映画の現在篇

  1. おろち
    これは文句無しの傑作。小さな奇跡だろう。
  2. 百万円と苦虫女
    タナダユキとの出逢いの記念碑。旧作「赤い文化住宅の初子」にも撃たれる。
  3. アフタースクール
    単なるトリッキーなパズル映画ではない。内田けんじの成熟が楽しみ。
  4. 秋深き
    池田敏春の復活。夫婦(めおと)映画の小品佳作。もう少し話題になってもいいはずだ。
  5. 落語娘
    中原俊はずーっと健在だったのだ。昨年髄一の怪談映画。
  6. おくりびと
    営業色が強すぎるのが気にはなるが、池田敏春中原俊と同時代にデビューした滝田洋二郎の新境地。

■気になっていた、或いは巷で話題の「歩いても、歩いても」「ぐるりのこと」「トウキョウソナタ」「休暇」「真木栗ノ穴」「東南角部屋二階の女」等々が未見なので、あまり褒められたものではないが、中原俊池田敏春滝田洋二郎といった80年代に大活躍した監督たちの新作が揃ったことが嬉しい。
■今年は中盤から日本映画の比較的新しい映画を集中的に観てみたのだが、日本映画の逞しさを再認識した。日本映画は、ハリウッド映画のモノ真似企画を止め(諦め)て、比較的小規模な映画に特化して、しかも日本人に向けて作り続けることが、一番素直な産業形態だということを、その過程で確信した。少なくとも、日本映画はむやみにスケールの大きいスペクタクル作品は製作しないほうがいい。特にSF大作などは、ハリウッドに任せておけばいいわけで、敢えて日本映画が制作する意味は、原則的に無い。日本でSFを作りたければ、アニメ映画とするのがセオリーだ。
■製作費10億円程度の作品を中規模の文芸作品としてAクラス作品とし、製作費数億円程度のものが一般娯楽作品、それ以下の1億円前後の低予算作品を若手監督のデビュー、習熟過程の映画やアート系作品とし、できれば群雄割拠の制作プロダクションの合同を促して、制作体制を強化すべきだ。今の姿はあまりにも、制作プロダクションが小規模すぎるので、合併によって経営の足腰を強化する必要がある。
■日本映画の製作本数自体はかなり盛り返しており、Vシネマの減少で減った分が、近年復活しつつある(気がする)し、新しい才能が確実に登場して、低予算の青春映画などに新風を吹き込んでおり、あとは、個々の作品の質感を向上させることを考えるべきだ。そのために製作、制作体制をもう少し充実してやる必要がある。そうすれば、単館系だけでなくシネコンのルートにも乗りやすくなるだろう。
■しかし、昨年はマキノ雅弘の映画が集中的に観られたことが大きく、特に、なぜかあまり話題にならない「いれずみ半太郎」には衝撃を受けた。名作「仇討崇禅寺馬場」も遂に観られたし、昨年はマキノづくしだった気がする。同様に、根岸吉太郎の最近作を見直して、傑作揃いなのに驚かされた。なかでも「透光の樹」の歪な妖力には参った。
■本年の目標は、西島秀俊の映画を見逃さないことですね。

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