道場破り ★★★

あの頃映画 「道場破り」 [DVD]

道場破り
1964 スコープサイズ 92分
DVD
原作■山本周五郎　脚本■小国英雄
撮影■太田喜晴　照明■佐野武治　
美術■大角純一　音楽■佐藤勝
監督■内川清一郎

■山本周五郎の「雨あがる」の映画化だが、小泉堯史の「雨あがる」が爽やかな人情劇だったのに比べると、かなり苦味の勝った時代劇に仕上がっている。
■それは、主人公長門勇とそれを追う藩の追っ手がともに浪人として仕官を願いながら果たせないという江戸時代のぎりぎりの食い詰め浪人として対置されていることによる。そのことはさらに、長門勇に対して奇妙な同情を寄せることになる丹波哲郎の残酷な境遇にも反映しており、厳しい管理社会としての幕藩体制から落ちこぼれた者達のやるせない心情に、作劇の焦点が結ばれていることを示している。黒澤明の脚本による「雨あがる」のような朗らかさとは程遠い人間群像が展開され、重厚なモノクロ撮影はリアル志向で、残酷時代劇全盛期の風潮を反映して流血シーンも当然のごとく盛り込まれている。
■照明は後に黒澤映画の常連となる佐野武治で、松竹映画京都撮影所の製作。現在の松竹京都映画撮影所の前身である。

道場破り