浪人街 ★★★

あの頃映画 浪人街 [DVD]

あの頃映画 浪人街 [DVD]

  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: DVD

浪人街
1957 スタンダードサイズ 110分
DVD
原作■山上伊太郎 脚本■村上元三マキノ雅弘
撮影■三村明 照明■入江進 
美術■進藤誠吾 音楽■鈴木静一
監督■マキノ雅弘

マキノ雅弘が戦前の正博時代に撮った伝説の傑作時代劇(無声映画)の松竹でのセルフリメイク。後に黒木和雄もリメイクした、浪人赤牛弥五右衛門(河津清三郎)、荒牧源内(近衛十四郎)、母衣権兵衛(藤田進)らの浪人達が頽廃した旗本たちと鋭く対立する様をどん詰まりの青春映画として描いた作品だ。
■とはいえ、キャストが皆さんそれなりにお年をめした方々なので、青春映画の趣は控えめである。ラストの大立ち回りも見所ではあるが、中盤の夜の剣戟で、刀が交わるたびに文字通り火花が散る殺陣が新鮮だ。既にこの時代からそうした特殊効果が実践されていたのだ。
■巾着切りのお新(水原真知子)に思慕を寄せる母衣権兵衛を藤田進が演じ、純情ゆえに恋敵でもある荒牧源内の斬り込みに加勢するといういい役を貰って、戦後の代表作といえる大活躍を見せる。われわれが知る藤田進は特撮映画の脇役でもっぱら定型的な役を演じていたわけだが、ここでは燃えつきぬ青春の炎の燻りを激烈に叩きつける。
■正直いって傑作とは思えないが、特に荒牧源内に虐められるお新を演じる水原真知子が出色の色っぽさを見せてくれる。その演技のありさまは、やはりマキノ節全開といった印象だ。角度によってはちょっと伊東美咲に見えないこともないのだ。

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