トランスフォーマー ★★★☆

TRANSFORMERS
2007 スコープサイズ 144分
TOHOシネマズ二条(SC10)


 マイケル・ベイ謹製のSF巨大ロボットアクション映画。「ダイ・ハード4.0」の10倍くらいは面白い、夏映画の模範生。ビールを飲みながら観ると200%愉しめるはずだが、長い映画なので膀胱が破裂するよ。

 巨大ロボットが市街地でどつきあうのは日本のテレビ特撮の独壇場だったのだが、とうとうハリウッドで決定版が製作されてしまった。ILMとデジタル・ドメインの担当したVFXは質量両面的に圧倒的で、おなか一杯×2くらいで、下手すると胃にもたれるほど。人類に味方するサイバトロン軍団と悪のデストロンが、アメリカのボンクラ高校生を焦点としながら対峙し、アメリカの都市を廃墟と化す大激戦を展開する。見せるべきところをいっさい省略せずに、真正面から映像化するマイケル・ベイの演出は確かなものだ。このおっさん、なんだかんだと批評家筋にはバカにされながらも、世界中の映像製作者のお手本として影響力を発揮しており、無視できない存在だ。正直、トニー・スコットよりもマイケル・ベイのほうがアメリカ映画の正統を担っているような気がする。

 ロボットアクションの見せ場では、やはり不用意にキャメラを動かしすぎで、ただでさえ複雑なディテールに作り込まれたロボットが、一体どんな体勢で戦って、どんな技を繰り出しているのかわかりにくいのは困ったことだ。これは、おそらく重量感を表現しにくいCGの欠点を補うための演出だったのかもしれないが、プレヴィズの悪い面も出ているのではないか。スタッフは複雑なキャメラワークを何回も繰り返し見ているから、アクションの流れが掴めるが、一見の観客は複雑すぎるアクションを追いきれるものではないのだ。そのあたりに誤解があるのではないかと思うぞ。このあたりは、ブレット・ラトナーの「X−MEN ファイナル・ディシジョン」での演出、編集のほうに軍配が上がる。

 細部については説明不足、脚本的には落穂ひろいの不十分な点が多々あるが、アクション映画として堅牢な構成を確保しており、ボンクラの童貞青年がサイバトロンと出会うことで終いには立派な兵士として全人類の未来を託されるという、バカ話をある場面では大真面目に、ある場面では思春期コメディのように、ある場面ではメロドラマ風に、メリハリを効かせて物語る話術は、予想よりもずっと巧妙だ。カタール基地の襲撃から始まるミリタリズム表現と、アメリカの片田舎でサイバトロンと遭遇する青年の物語が並行して展開して、後半に合流する構成もちゃんとサスペンスを生み出しており、秀逸。ラストの大激闘の決着にもうひとつ頓知を利かせてくれれば傑作になったかもしれない。

 次回は、ぜひとも日本語吹替え版で観たい。吹替え版のほうがロボットアニメ的なケレン味がアップしているはずだ。

 あと、ついでにTOHOシネマズ二条のスクリーン10のH列で観たが、音がやたらと大きくて閉口した。軽く難聴になった気がする。どうも最近のシネコンは音響設備の高性能化で、やたらとメリハリをつけて、大きい音はとことん大きく鳴らすので、観ていて疲れることがある。もっと耳に優しい音響を志向すべきではないか。個人的には重低音は耳に響くのではなく、腹に響くタイプが快い。イオンシネマ久御山などいい感じだったのだが、最近はどうだろうか。

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