ボルト ★★★☆

BOLT
2009 ヴィスタサイズ 96分
TOHOシネマズ岡南(SC9)

Bolt / [DVD] [Import]
■夏休みアニメ映画特集。日本語吹替え版の2D上映で鑑賞。佐々木蔵之介はまだいいが、江角マキコの声はあまりにもユニークで、どうしても本人の顔が浮かんできてしまうので困る。ライノは役そのものが鬱陶しく、これはもう少しあっさりとした役回りにすべき。重要な役割を果たす主題歌も日本語で歌われると、あまりにストレートすぎて鼻白む。そもそも子供向け映画なので文句を言うほうが筋違いではあるのだが。
■お話はディズニー伝統の動物映画の基本線を踏襲して、飼い主と引き離された飼い犬が飼い主の少女の元にたどり着くまでのロードムービーだが、構成的に難があるのは、冒頭に置かれる大アクションシーンのボリュームが多すぎるのと、その完成度が高すぎることだ。いきなり導入部で並のアクション映画一本分以上のアクロバティックなアクションを見せられると、それだけでもうお腹一杯になってしまうのだ。この後、主人公のボルトが普通の犬としての自己を発見してゆくお話は、フィクションのハデハデな、しかし非常に魅力的なアクションに比べると、地味になってしまうからだ。クライマックスのハリウッドでの現実世界でのアクションが冴えないのは、この構成の失敗に起因している。
■しかし、それでも各シーンには工夫が一杯で、単純なお話ながら、ディテールの積み重ねで愉しませる映画である。ジョン・ラセターが製作総指揮を務めているので冒頭部分の大アクションは言うまでもなく、主題歌を被せた珍道中のシーンの楽しさも際立っている。ジョン・パウエルの劇伴も出色。
■悪漢と戦うスーパーヒーロー犬というファンタジーから醒めて現実の一匹の犬としての居場所を見つけるという寓話には、世界の警察を自認して対テロ戦争の幻想にのめり込んで自滅の危機を味わったアメリカそのものの姿が重なりあわせてみられるようになっている。ライノの出番がもう少し少なければ更に良かったのに。

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