アイアンマン ★★☆

IRON MAN
2008 スコープサイズ 125分
TOHOシネマズ二条(SC4)

■ILMのCGアニメのリアリティは凄いと思うのだが、アクション映画としては大甘。2時間もあるわりにはお話も単調でツイストが足りない。正直、アクション映画としては東映宇宙刑事のほうがカッコ良い。

■兵器開発会社の社長がアフガンでテロリスト軍団に拉致されて、自分の売っている兵器でテロ活動が行われていることを知って改心するという導入は現代的で面白いのだが、改心するにしても、ひとつ泣かせどころを作ってくれないとアクション映画としてのドライブがかからない。その後は社長自らアイアンマンスーツを開発する模様が描かれるが、これも所詮マンガ的兵器で理詰めではないのだから、宇宙刑事のように一瞬で変身するほうがアクション映画としてのカタルシスは大きいだろう。宇宙刑事ギャバンなら0.05秒で蒸着してしまうところを1時間以上かけている計算だ。随分のんびりしたことである。

■敵役にも意外性は皆無だし、ラストの対決にしても妙にありきたりで、巨大ロボットなら「鉄甲機ミカヅキ」のミニチュアワークの方がよほどリアルな重厚感に溢れている。

アメリカという社会は、何でもとことん成功者に期待する、悪く言えば少数の成功者に大勢が群がるという構成を取っていることがよく分かる映画でもある。戦争を商売として利用する、というか商売としての戦争に対する反省についても、戦争の末端で命を削っている弱者としての兵士ではなく、ピラミッドの頂点に君臨する大金持ち(かつ天才エンジニア)であるというところに、アメリカのユニークさが見える。日本で考えれば、戦争の最前線で生き残った者の怨念といったものがヒーローの条件になるはずだ。まあ、日本の場合は怨念とか怨霊信仰という特殊なメンタリティが生き残っていることも無視できないのだが。

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