アザーズ ★★★☆

THE OTHERS
2001 ヴィスタサイズ 104分
DVD


アザーズ [DVD]
 コレクターズエディションのDVDを中古で安く買った(1500円くらいだよ!)ので、ロードショー以来久しぶりに再見した。初見の印象は旧鞠小路グリーン劇場のここを参照のこと。
 改めて見直すと、印象もかなり違ってくるから人間なんて適当なものだ。まずは、 ハビエル・アギーレサロベのキャメラだが、DVDで見るとどうしても明るめになってしまうせいもあって、せっかくの闇に閉ざされた屋敷の内部の情景が十分に達成されていない気がする。ランプひとつ持ってニコール・キッドマンが屋敷の内部を恐々歩き回る怪奇映画的な場面にしても、例えばモノクロ撮影による「幽霊屋敷の蛇淫」のような濃厚な闇の感触は希薄で、コントラストの弱い照明設計のせいで、文芸映画のようだ。実際、古典的なステージ照明の応用で、実際にアベイラブルライティングを行ったかのような映像効果を大映京都のスタッフなら達成することができるのだが、ここではそのレベルには達していない。
 しかし、改めて見て感心したのは信心深いニコール・キッドマンが、死後の世界がカトリックの信仰と異なることを知るというシニカルなアイディアもさることながら、夫に去られた若後家状態の性的欲求不満を念入りに描き出している点で、撮影当時28歳だったアメナーナバルの早熟な才能を見せ付ける。さらに、特典映像のコメンタリーを見ると、光と闇のせめぎあいを、大気と水のせめぎあいに見立てて、屋敷内を水中のように描き出そうとする発想の妙に感心し、そういえば、屋敷の庭に聳え立っている異様な古木は、空中と地中が逆転し、根を空中に聳やかしていることに思い至るのだ。特撮の世界ではミニチュアで木を表現するために、小さな木の根を枝に見立てて葉をしつらえてゆく技法があるのだが、本編でそうしたトリックを駆使したのは異色とえいるだろう。全てが逆転した世界である伏線にもなっているのだ。コメンタリーで「チェンジリング」を薦めているのも、勉強家であることがうかがえる。英語圏の役者たちに、ちゃんと英語で指示を出して演出しているのも、単純に偉いと思うよ。清水崇くんも頑張れ。コメンタリーを聞くと、ちゃんと隅々まで考えて作られていることに安心しつつも、芸術家の発想法の一端に触れた気がして、得した気がする。値段的に高いDVDだが、中古があれば買って損は無い。
 怪奇映画的な演出については必ずしも秀逸ではなく、全体にイギリス映画界の得意な文芸映画というムードを堅持しているところも凄い。しかも、屋敷の周辺を描く場面は、かなりデジタル合成が使用されて、しかも自然なので気づかないのだ。あの霧のかなりの部分はCGなのである。
 怪奇映画の職人としてはジャウマ・バラゲロのほうに軍配を上げるが、アメナーバルはもっと守備範囲の広い映画作家になるのだろう。