続・光る眼 宇宙空間の恐怖 ★★★★

CHILDREN OF THE DAMNED
1963 ヴィスタサイズ 89分
DVD


 傑作「光る眼」の続編。各国からロンドンに集まった5人の子供たちに対して、その特殊能力を軍事利用しようとする各国が暗躍するなか、彼らは廃教会に篭城する。抹殺の方針を固めたイギリス軍は教会を包囲するが・・・

 前作は傑作として映画史上も有名だが、その続編というか、リメイク作といった趣の本作も前作に劣らず傑作である。まず、イギリス映画伝統の陰影の利いたモノクロ撮影の迫力*1は前作の牧歌的な作風と異なる魅力となっているが、何よりも冷戦下の世界情勢に対する批判的寓話としてよくできている点で特筆に価するだろう。そうしたテーマの映画は50〜60年代に数多く製作されたが、SF映画としての完成度の高さでは群を抜くだろう。

 彼らの目的は何なのか、その答えが明かされるラストは名シーンと呼んでも差し支えないだろう。前作では人間の理解を超えた存在として子供たちが描かれたが、本作ではその意味付けを変えて、特異な能力を備えた無垢な存在として描き出している。そのため、前作で特徴的だった金髪のカツラを使用せず、眼の発光も必要最小限に止められている。*2彼らの口から明かされる、その目的、そして、世界各国から集まった五人の子供たちがラストに手を繋ぐ場面は、前作とは異なる圧倒的な感動をもたらす。

 脚本家のジャック・ブライリーのコメンタリーが実に貴重で、後に「ガンジー」の脚本を書く男だが、その映画デビュー作だったらしい。しかもイギリスとアメリカではかなりヒットしたらしく、日本ではほとんど知られない映画だが、本作のが名刺代わりになりプロとして食っていけたそうだ。しかも、本作の実質的な脚本監修には、レッドパージでハリウッドを追われてイギリスに移住した脚本家エイドリアン・スコットが当たり、映画脚本ははじめてのジャック・ブライリーに具体的な助言をしていたそうだ。撮影はMGMのロンドンの撮影所で、イギリス人スタッフ、イギリス人俳優で行われているが、当時のMGMロンドン撮影所の会議には重役に混じって羊飼いの男が出席して、配役に意見を述べたりしていたらしい。なぜ羊飼いが?と思ったあなたはこのDVDを購入することをお奨めする。絶対に買って損は無いDVDだ。安すぎて罰が当たりそうな気がするぞ。

*1:撮影は「たたり」のデヴィッド・ボールトン

*2:コメンタリーによると、眼の発光はやめたかったらしい

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