THE JUON 呪怨 ★★★

THE GRUDGE
2004 ヴィスタサイズ
レンタルDVD

THE JUON -呪怨- ディレクターズ・カットコレクターズ・エディション [DVD]
 清水崇がハリウッドで自作の2回目のリメイクを果たした話題作。といいながら、脚本、編集、音楽とVFXの一部を除いて、東宝撮影所で、日本のスタッフで撮りあげた半日本映画である。撮影監督・山本英夫、照明・金沢正夫、美術監督・斉藤岩男、セットデザイナー・金田克美、VFX・松本肇(Big X)という錚々たる実力派スタッフである。

 物語はお馴染みの呪怨を、一層わかりやすく再構成したもので、一見の観客にも理解しやすい親切なつくりだ。ただ、恐怖の迫真度については、1作目のビデオ撮り独特の質感が醸し出す嫌な空気感には遠く及ばず、ちっとも怖くは無い。だが、「呪怨」のメジャーなリメイクとしては、うまくバランスのとれた成功作といえる。DVD版はディレクターズカットだが、それでも100分未満というコンパクトサイズに仕上げたのも成功の秘訣だろう。

 興味深いのは、日本で暮らすアメリカ人の疎外感を描き出して恐怖に結び付けようとする演出姿勢で、アメリカ映画として日本人が撮影した東京の風景や、和洋折衷の家屋のざわざわと落ち着かないアンバランスな雰囲気を丹念に積み上げたディテールが、恐怖描写よりも、むしろ面白い見所になっている。このあたりの照明設計などは、やはりスクリーンで見ないと真価は判断できないだろう。劇場で見逃したことが悔やまれる。

 舞台をアメリカに移し変えずに日本で撮影する、しかも日本のスタッフを使って、という判断を下したサム・ライミの眼力はさすがというしかない。

 映画としては「輪廻」の企みのほうに軍配を上げるしかないが、清水崇の演出力の安定感は頼もしい限りだ。

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