輪廻 ★★★★

輪廻
2006 ヴィスタサイズ 96分
京都宝塚劇場
脚本■清水 崇、安達正軌
撮影■柴主高秀 照明■渡部 嘉
美術■斉藤岩男 音楽■川井憲次 視覚効果■松本 肇
監督■清水 崇


 35年前にあるホテルで起こった11人惨殺事件に取材した映画のオーディションで重要な役に選ばれた女優(優香)は、撮影中に謎の既視感に襲われる。一方、そのホテルの夢を頻繁に見る女子大生(香里奈)は、犯人の元妻(三條美紀)を訪ねて意外な動機を知り・・・

 なぜか「JUON」も「ダーク・ウォーター」も「RING2」も劇場で見逃すという信じがたい体たらくな昨今ですが、Jホラー最新作は、予想を超えるトリッキーな怪奇映画の傑作でした。「恐怖の足跡」を想起させる場面もあり、むしろ幻想映画と呼ぶ方が相応しいかもしれない。

 数々のショックシーン自体はルーチンワークで、ちっとも怖くはないが、ある家族を無残な不幸に陥れた邪悪な意図が徐々に明らかになるクライマックスの錯綜した複雑なモンタージュによって、映画自体が邪悪な気配を漂わし始めるあたりから、この映画のちょっと神がかった凄みが感知されるようになる。

 実も蓋もなくいえば、重層的に仕掛けられた”映画”という枠組みの無限連鎖の中に、確かに”地獄”の存在が確信されているところにある。

 というか、映画のクライマックスでは、紛れもなく東宝撮影所に建造されたホテルのセットが”地獄”そのものとしてゆらゆらとわれわれの目前に現出するのだ。驚嘆した。唸るしかない。それは、Jホラーの、そして清水崇の描く恐怖の質が大きく転換した瞬間なのだ。

 敢えて注文を付けるとすれば、三條美紀の役どころはもう少し知名度のある女優を起用すべきではなかったか。極めて重要な役どころであるだけに、少し勿体無い気がする。

 実のところ、鶴田法男のようにもっとオーソドックな怪奇映画に回帰するのかと予想していたのだが、より過激な方向へ舵を切るとは、清水崇の若さが憎い。


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