顔役暁に死す
1961 スコープサイズ 96分
日本映画専門CH
原作■大藪春彦 脚本■池田一朗 小川英
撮影■太田幸男 照明■山口偉治
美術■村木忍 音楽■池野成
監督■岡本喜八
■テレビを買い替えたら、CS放送の試聴期間が着いてきた。日本映画専門CHでは岡本喜八特集が稼動中で、こんな映画が観られた。しかも、オリジナルネガから最新技術で制作された放送原版のデジタル力の凄さに圧倒される。フィルムの瑕は当然皆無。色合いの褪色も無く、すべてがつやつや、それでいて、暗部の沈み方も力強く、最新のハリウッド映画並の画質だ。
■もちろん、これには落とし穴があって、この画質はフィルムのものではない。上映用のポジフィルムの質感、色合いとは全く異なるものだ。この点については誤解が生じると困るので、力説しておく。フィルムの独特の質感とは全く別物、テレビのディスプレイで映えるようにデジタル化されたものである。それと知りつつも、このこってりと肉厚な色の乗り方には、惹かれる。これは、もう映像のルック的には、オリジナルとは完全に別物である。
■ドラマ的には、「用心棒」を踏襲したアクション映画だが、岡本喜八の軽快な頃の味わいがよく出ていて、とにかく快作。原作ものなので、ひねりも効いている。汚職警官とか、ヤクザの用心棒とか、脇役の小悪党たちに、それぞれ小さな見せ場を用意して、泥水の中にしか棲めないものたちの小さな哀しみを掬い取る手際は、邦画の良き時代を感じさせる。島崎雪子と平田昭彦の腐れ縁と執着とか、平田の用心棒のボクサーくずれの金田の哀れさとか、もう大人の娯楽ならではのさらっとした描き方だが、心に滲みる。邦画からすっかり滅び去った美風だ。特に平田昭彦のカッコ良さは、特筆ものだ。この線で東宝だけでなく、日活とかでも活躍していれば、もっと幅のある役者になっただろうに、東宝専属が仇になった気がする。